東京・八王子のスーパー射殺事件では、警視庁八王子署捜査本部が現場に残された手掛かりや1678件の情報提供などを基に、国内外での捜査を続けてきた。 複数の人物が捜査線上に浮上したが、容疑者特定に至らぬまま30年の月日が過ぎた。事件の風化が懸念される中、捜査員は必死に解決の糸口を探る。 事件ではアルバイトの女子高校生2人とパート女性が頭部などを拳銃で撃たれ殺害された。事務所内の金庫にも弾痕があったが開けられておらず、中にあった店の売上金約500万円は残されたままだった。捜査本部は強盗と怨恨(えんこん)の両面で捜査している。 事件の前後にスーパー周辺では、不審な白色セダンの目撃情報が複数あった。現場の足跡から絞られた容疑者の靴は26センチのスニーカー2種類で、全国で計533足販売されたことが判明。緊縛に使われた粘着テープはコンビニエンスストアなどで大量販売されたことも分かったが、いずれも購入者特定には至っていない。 事態が動いたのは2009年。中国で麻薬密輸罪に問われた武田輝夫元死刑囚=10年に執行、当時(67)=が実行役について知っている可能性が浮上し、捜査本部は中国に捜査員を派遣した。 その際、名前が挙がったカナダ在住の中国人の男(54)を13年11月に旅券法違反容疑で逮捕。日本に身柄を移送して調べたが、事件につながる情報は得られなかった。 同じく13年ごろには粘着テープから採取した指紋が東京・多摩地区に住んでいた日本人の男の指紋と似ていることも判明。ただ、男は既に病死しており、遺留指紋も不完全な状態だったため、関与は判然としなかった。 凶器とされるフィリピン製の38口径回転式拳銃「スカイヤーズビンガム」の流通ルートを調べるため、同国に捜査員を派遣したこともあった。 現場の事務所内から採取された100点以上の指紋についても照合作業を進め、この30年で個人が特定できていないものは7点まで絞り込まれた。 この1年間で寄せられた情報提供は32件。捜査本部はその都度提供者に話を聞くなどし、1件ずつつぶしている。 30年がたち、関係者の記憶が薄れたり、亡くなったりしたケースも少なくない。それでも捜査員は「捜査技術は進歩する。『当時は言えなかったけれど』と情報提供をしてくれる方もいる」と自らを鼓舞し、事件解決を目指す。