39年前に福井市内で起きた女子中学生殺人事件をめぐり、殺人の罪で懲役7年の刑が確定し服役した前川彰司さん。前川さんのやり直しの裁判=再審で、7月18日に名古屋高等裁判所金沢支部が前川さんの無罪を支持した判決に対し、名古屋高等検察庁は1日、上告権を放棄しました。これにより前川さんの無罪が確定、前川さんは冤罪でした。 無罪の確定を受けて前川彰司さん(60歳)は、午後4時から福井市内で弁護団とともに会見を開きました。 前川さん: 「よかった。無罪を勝ち取ることができて悲願が達成できた」 1986年に福井市内で起きた女子中学生殺人事件の容疑者として逮捕・起訴された前川さん。一審で無罪となりましたが、二審で懲役7年の逆転有罪判決が言い渡され服役しました。 しかし、その後も一貫して無罪を訴え続け、2024年10月に2回目の再審開始が決定しました。 7月18日に名古屋高裁金沢支部で行われた再審判決公判で増田啓祐裁判長は、控訴を棄却し、35年前の一審・福井地裁の無罪判決を支持しました。 弁護団によりますと、上告の期限となった1日、検察は再審判決に対する上告権を放棄、前川さんの無罪が確定しました。 前川さん: 「あえて言うならこれで良かったと終わらせてはいけない。多くの犠牲を払ったという思いがある」 吉村悟弁護士: 「本来起訴すべき事件ではなかった。裁判も非常に偏ったものだった。前川さんをいけにえにした事件。明らかに検察官の悪だくみ、検察が作り上げた免罪事件」 一方、上告しなかった名古屋高等検察庁はコメントを発表。「憲法違反や判例違反といった上告理由がないため上告権を放棄した」とした上で、再審判決について「関係者の虚偽の供述に沿う他の供述が形成された疑いがあるとの裁判所の指摘を重く受け止めている」としました。 さらに、関係者供述の裏付けとしたテレビ番組の放送日が実際とは違うと知りながら主張を維持したことについて「当時の検察官の対応が不公正だったという指摘を受け入れ、真摯に反省し教訓としたい」としました。 一方、前川さんを容疑者として逮捕した福井県警は、増田美希子・県警本部長が会見を開きました。 増田本部長: 「前川さんに対し長く負担をかけることになってしまい重く受け止めている。前川さんに直接会うかどうかは、前川さんが今後警察の捜査について訴訟するという報道も出ているので、諸般の調整を踏まえ考える」 逮捕から38年、冤罪と戦い続け、自らの潔白を証明した前川さんはこう訴えました。 「一度免罪というやり玉に挙げられたものとしては、終わることのない事件と思っている」 前川さんと弁護団は、逮捕・勾留された期間と刑務所に服役させられた期間について、刑事補償金を請求する方針を決めました。国などに賠償を求めるかは未定ということです。