《ボリビア》20年ぶりに右派政権へ=左派モラレス選挙無効主張

ボリビア大統領選挙の一次投票が17日に実施され、中道右派のロドリゴ・パス上議が32%の得票率を獲得して第1位となり、保守右派のホルヘ・キロガ元大統領が26%で続き、両者は9月の決選投票で争うことになった。これにより20年間続いた左派政権に終止符が打たれる見通しで、左派のエボ・モラレス元大統領は選挙の正当性を否定し、無効票を呼びかける異例の展開となっていると同日付CBNなどが報じた。 今回の選挙は、長期にわたり同国を支配してきた左派勢力の影響力低下を象徴するものとなった。パス氏は、ハイメ・パス・サモラ元大統領の息子であり、中道右派の立場から政治改革を訴えて支持を集めた。一方、キロガ元大統領は保守右派の旗手として根強い支持層を維持している。 選挙直前には、富豪実業家サムエル・ドリア・メディナ氏が有力候補とされていたが、一次投票では20%の得票率にとどまり、第3位となった。メディナ氏はセメント、ホテル、ファストフード業界で財を築き、燃料や米ドル、生活必需品の深刻な不足に対応するため、100日間の緊急経済対策プランを公約として掲げていた。同氏は第1位のパス氏への支持を表明している。 ボリビアは現在、年間インフレ率が約25%に達し、燃料や米ドルの不足といった深刻な経済問題に直面している。加えて、2006年から3期務めたモラレス元大統領の影響力が依然として政治を揺るがしており、今回の選挙結果にも影響を及ぼした。同氏はボリビア史上初の先住民出身大統領であり、与党・社会主義運動(MAS)の創設者の一人として、長年にわたり左派勢力の象徴的存在となってきた。 モラレス氏は、未成年者に関する人身売買疑惑により逮捕命令が出されており、自身の出馬が認められなかったことへの抗議として無効票を呼びかけ、選挙の正当性に疑義を呈している。投票後には「今回は(形式的に)投票するが、選ばせない」と述べ、いかなる候補者も支持せず無効票を投じることで、選挙そのものの正当性を否定する考えを明らかにした。無効票が最多得票となることで、有権者の抗議の意思が示されるべきだとの認識を示している。この主張に対して、選挙全体の手続きが概ね公正であったとする国際監視団の評価も報じられている。 ブラジリア大学国際関係研究所のロベルト・ゴウラルチ教授は、「今回の選挙結果は、MAS内の分裂が顕著になった結果だ」と分析。同党所属のモラレス氏と現職のルイス・アルセ大統領の対立が左派勢力の分裂を招き、これが選挙戦に影響を与えたと指摘している。モラレス氏は選挙直後、SNS上で「アルセさえいなければ、我々の政治運動がこの選挙を主導していた」と主張した。 同教授は、右派政権誕生後もボリビアとブラジルの関係に大きな変化は見込まれないとの見解を示した。両国は約3423キロメートルに及ぶ国境を有し、物流や経済協力の面で密接な連携を維持している。特にブラジルのロンドニア州とアクレ州では、ボリビアへの輸送路の整備が進められており、大豆などの輸出促進が期待されている。

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