潜む見えない敵 トクリュウ撲滅への難題=東京社会部長・石川淳一

世界は混沌(こんとん)としています。国際秩序や法の支配が揺らいでいます。日本の政治や経済の先行きも不透明です。2026年はどんな年になるでしょうか。毎日新聞の部長が展望しました。 ◇見えない敵と向き合う 東京社会部長・石川淳一 2025年末、捜査が大きな進展を迎えた。首都圏で相次いだ「闇バイト」による強盗事件。警視庁などは「指示役」とされる容疑者4人を逮捕した。匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)撲滅に向け、歩みを進めたといえる。 トクリュウは緩やかに結びつき、犯罪ごとに実行役を替える。実行役は、交流サイト(SNS)などで「ホワイト案件」といったうたい文句で集める。痛ましい事件の裏で、指示役の顔すら知らない若者ばかりが捕まり、使い捨てにされていった。 仮想空間でつながる事件の構図は、今の社会の姿でもある。見えない敵は、匿名性の高いツールを盾に26年、さらに複雑・巧妙化するとみられる。犯罪もオンラインカジノなどに裾野を広げている。対する警察も、捜査員が身分を偽って闇バイトに応募する仮装身分捜査という新たな手法を獲得した。生成人工知能(AI)を駆使して、SNS上のやりとりや金銭授受のデータを分析し、中核を突き止める捜査も進められていく。着実に追い詰めるだろうが、私たちが負う課題も重い。 社会のつながりが希薄であればこそ成立する犯罪だと直視しないわけにいかない。駒にされた実行役は、職がなく生活苦を抱える若者であることも多い。若者が社会からこぼれ落ちている事実をつまびらかにし、彼らを加害者にさせない支援態勢作りに乗り出すことが欠かせない。 コンビニの店員やタクシー運転手が、高齢者の様子に違和感を覚え、特殊詐欺被害から救った例も多い。見えない敵が日常に潜り込む中、顔の見える関係を地域が築くことも、芽を摘む一助となるはずだ。 私たちは何を明らかにできるのか。匿名社会との向き合い方をいっそう考える年としたい。

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