神戸市中央区のマンションで20日夜、住人の会社員、片山恵さん(24)が刺殺された事件は22日、30代の男が殺人容疑で逮捕されたことで急展開した。男は犯行後、マンションから北の方に逃走。マンションを出入りする男の姿が防犯カメラに写っており、兵庫県警葺合署捜査本部はカメラの映像をたどる「リレー捜査」の手法で、男の足取りを追ったとみられる。 同区磯辺通のマンション(9階建て)に片山さんが帰宅したのは20日午後7時20分ごろ。エントランスのオートロックを開ける片山さんの後をつけるように、建物内に入っていく様子が防犯カメラに写っていた。 エレベータ内で男女がもみ合い、男が羽交い締めにする様子も目撃された。男の手には刃物が握られていたという。自室がある6階で倒れていた片山さんは、その後死亡が確認された。 一方、男は外階段を使って下りたとみられ、3~4階部分で住人がすれ違っている。入ってきたときと同じドアから外に出て、JR三ノ宮駅や新幹線が通る新神戸駅のある北方向に逃走した疑いが強い。マンション周辺には刃物が落ちていた。 逃走する犯人の足取りを追う手法として近年、警察当局の強力な武器となっているのがリレー捜査だ。 カメラ映像の事件捜査への活用は古くからあったが、犯行の様子を直接記録したものなどに限られてきた。複数の映像を分析し、つなぎ合わせる手法を組織立って行うようになったのは、平成21年に警視庁が設立した捜査支援分析センター(SSBC)が先駆けとされ、以降、他府県にも広がった。 態勢整備や捜査員の練度向上といった警察当局の取り組みに加え、カメラも高性能化。Wi―Fi(ワイファイ)などを使った迅速なデータ収集が可能となったことなども追い風となった。 警察庁によると、殺人などの凶悪犯罪で防犯カメラ映像などが容疑者特定のきっかけとなった事例は、平成28年には全体の8・35%だったが令和5年は19・86%に増加している。