「銀行口座を売ると、人生詰む」「闇バイトはダサい」-。高校生が特殊詐欺や闇バイトに巻き込まれたり、加担するケースが後を絶たない。被害者にも加害者にもならないためには、手口を知り、誘惑に乗らない「自衛」が不可欠だ。光が丘署が都立田柄高(練馬区光が丘)で実施した啓発イベントでは、担当者が同年代の息子に相談し、高校生に〝刺さる〟言葉遣いを意識。「被害に遭わず、誘われても断れるようになるきっかけにしてほしい」と呼びかけた。 ■「キーワード」に注意 イベントは7月に行われ、同校の2年生約160人が出席。約4割がネパールや中国など外国籍の生徒であることに配慮し、母国語の資料も用意された。 講演した光が丘署の松浦博行刑事組織犯罪対策課長は、今年1~6月に警視庁管内で確認されたオレオレ詐欺のうち、警察官になりすます手口が約7割に上り、被害者の9割以上が60歳以下であることなどを説明。 警察官をかたる詐欺の特徴について、海外の電話番号から着信があり「他人に話したら逮捕」などと口止めしてくる-を挙げ、犯行グループがよく用いる手法である、ライン電話を使って警察官が被害者とやり取りしたり警察手帳を見せたりすることは「絶対にない」と注意喚起した。 さらに闇バイトに勧誘する典型的なキーワードについては「海外のリゾートバイト」「プール付きの家で仕事できる」などを例示。SNSには「楽に稼げる」などの誘い文句が躍るが、「(犯行グループは)コメントに反応する人を狙っている。カモにならないように気をつけてほしい」と訴えた。 ■若者に〝刺さる〟工夫 松浦課長は、過去の取り調べで「海外では詐欺電話をかける『かけ子』の利用価値がなくなれば、臓器を摘出して売る、という話が出た」と言及。 闇バイトの捜査を担当した若手刑事も登壇し、実行役を募る「リクルーター」が「受け子、出し子をやるやつはバカだ」という趣旨の供述をしていたと振り返った上で「甘い誘いに乗らないでほしい」と、安易に関われば命を失い、人生を棒に振る犯罪であることを重ねて強調した。 イベントでは、具体的な手口を詳細に伝えることにとどまらず、「詰む」「(犯罪は)コスパ最悪」など、若者になじみが深い言い回しを使って説明がなされた。今回のイベントに当たって松浦課長は、自身の高校生の息子に相談。「どうすれば高校生に響くか」を意識したという。