投票見返りの「報酬の約束」とは? 指のジェスチャーを認定した例も

今年7月の参院選で、パチンコ業界団体の組織内候補を違法に当選させようとしたとして、パチンコ店運営会社の社長らが公職選挙法違反の疑いで逮捕された。容疑は従業員らに対し、投票の見返りとして報酬を約束したというもの。「報酬の約束」をめぐってはこれまでも事件化されたことがあるが、どのような行為が「約束」とみなされるのだろうか。 公選法では221条に「買収及び利害誘導罪」についての条文があり、当選を目的として金銭の供与の約束をした場合は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとしている。 ■文章・口頭は問わず この条文に抵触するような具体的な行為について、総務省は「個別の事案については(捜査)当局で判断する」としつつ、「一般的な解釈として、『約束』が文章か口頭かは問わない」としている。 捜査関係者によると、「約束」は一方が依頼した時点で成立するが、捜査の実務では相手が応じたことを受けて立件することが多いという。 「約束」したかどうかが争われた事件もある。 2021年10月にあった福井県越前市長選では、法定限度を超える報酬を複数の車上運動員に支払う約束をしたとして元会社役員が罰金40万円の有罪判決を言い渡された。日当上限が1万5千円のところ、元役員は追加の報酬を含め2万~3万円を支払うと約束した罪だった。 ■ジェスチャーが「約束」と判断された例も 裁判で車上運動員は、報酬について元役員が「最初はこれな、後からこれな」と言い、指で1と5のジェスチャーを示したと供述。「法定の1万5千円を先に払い、その後に1万5千円を払い、3万円を払う意味だと思った」と話していた。 元役員はジェスチャーをしたことはないとしたうえで「約束」も「していない」と無罪を主張。しかし福井地裁は車上運動員の説明について信用性が高く、「約束」はあったと認定した。 21年10月の衆院選でも、大学生ら15人に時給1千円を支払う約束をしたなどとして、警備会社代表が罰金50万円の略式命令を受けた。特定の候補者に投票するよう電話で依頼する選挙運動の報酬だったという。(御船紗子)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする