不正契約は「僕以外にも…」 社員証言、不動産会社での“罪の意識”

「直属の上司も含め、(不正契約は)僕以外にも複数の人がしていた」。無職の人でもマンションを借りられるように書類を偽造したとして、詐欺罪などで逮捕・起訴された大阪市の不動産仲介会社の男性社員(27)は25日に福岡地裁であった初公判で証言した。捜査関係者によると、福岡県警は同社内で違法行為が常態化していたとみており、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づいて同社を行政処分するよう大阪府に要請するという。 不動産の賃貸契約を結ぶ際の入居審査で重視されるのは、家賃の支払い能力の有無だ。無職の場合、預貯金や収入見込みが無いと審査通過は難しくなる。不動産取引のルールを定める宅建業法は不正契約を防ぐため、不動産仲介会社などが取引先にうそを伝えたり、事実を隠したりすることを禁じている。違反した場合、全部または一部の業務について1年以内の停止処分が科される。 大阪市の不動産仲介会社の男性社員は、市内のマンションを借りようとした顧客が無職であることを隠すため、就職先が決定しているように見せかけた虚偽の内定通知書を作成した罪などに問われている。顧客は違法薬物密売グループのメンバーで、不正契約された部屋はグループの拠点などに使われていた。 検察側の冒頭陳述によると、密売グループのメンバーは2024年8月下旬ごろ、知人から「無職でも賃貸契約を結ばせてくれる会社がある」と聞き、不動産仲介会社を訪問。男性社員に「無職だが審査を通してほしい」と打診した。同社内では成約額に応じて給料が増えるシステムだったため、男性社員は書類偽造に手を染めたという。 男性社員は被告人質問で「無職の人はこうしたらいいと聞いていたので、罪の意識は当時なかった」と供述した。 福岡県警の捜査幹部は「契約された部屋が犯罪に利用されるとまでは知らなかったかもしれないが、犯罪をしやすい環境を不動産業者が作り出していたといえる。同様の不正行為が業界内で横行している可能性もある。犯罪インフラを断ち切るためにも厳しく取り締まる必要がある」と話す。【栗栖由喜】

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