長崎県大村市で2009年、内縁関係にあった同居女性を殺害したとして殺人罪に問われた馬場恒典被告(75)に対し、長崎地裁の裁判員裁判(太田寅彦裁判長)は4日、無罪(求刑懲役18年)を言い渡した。殺害日時などが特定されておらず「実行犯と認定するには合理的な疑いが残る」と判断した。 事件では、同市の松永千賀子さん(当時48~49)が09年に行方不明となった後、18年に同県諫早市のプレハブ倉庫で遺体で発見された。長崎県警は23年3月に馬場被告を殺人容疑で逮捕。検察は被告の知人の「遺体らしきものを運んだ」とする証言などを柱に、被告が09年4月中旬~6月ごろ鈍器のようなもので松永さんを複数回殴って殺害したとして殺人罪で起訴したが、被告側は無罪を主張していた。 判決は、事件当時、被告に不審な行動があることから「実行犯であることを強くうかがわせる」とする一方、検察側の立証の柱の一つだった知人証言の多くが客観的な証拠による裏付けを欠いており「信用するには疑問が残る」と指摘。殺害日時が特定できず、凶器も未発見であることなどにも触れ、無罪とした。(池田良)