古代エジプト美術品600点を密輸、米地裁で実刑判決──来歴を偽りオークション出品も

8月27日、古代エジプトの美術品密輸を図ったアシュラフ・オマール・エルダリルに対する連邦地裁の判決が、レイチェル・P・コヴナー判事によって言い渡された。2019年から20年初めにかけ、カイロからニューヨークへ向かい、ジョン・F・ケネディ空港で600点近い古美術品を虚偽の申告で持ち込もうとしたエルダリルは5年前に逮捕されている。アラブ首長国連邦(UAE)のニュースメディア、ザ・ナショナルが実刑判決の第一報を伝えた。 当局が押収した古美術品には、彩色されたレリーフのほか、持ち込まれた後にオークションで1000ドル(最近の為替レートで約14万7000円、以下同)で落札された古代ローマ時代の石碑、同じくオークションで1300ドル(約19万円)で落札された古代ローマの彫像の頭部などがあった。 エルダリルは密輸に関する4件の罪を今年2月に認めており、連邦公選弁護人補佐のカンナン・スンダラムとジュリアン・ハリス=カルヴィンが8月14日に提出した文書には次のように記されている。 「2019年の3回の入国時に手荷物でそれぞれ1個の古美術品を持ち込み、2020年には預け入れ荷物の3個のスーツケースから合計約590点の古美術品が見つかった」 2020年1月、エルダリルは税関・国境取締局の係官に対し、持ち込む品物の合計額は300ドル(約4万4000円)相当だと申告したが、3つのスーツケースの中から見つかったのは緩衝材に包まれた590点もの美術品だった。ニューヨーク東部地区検事局のジョセフ・ノチェラ・ジュニアは8月20日に提出された量刑理由書で、「ジョン・F・ケネディ空港における密輸古美術品としては過去最大の押収量」だと述べている。 同検事局のプレスリリースでは、「梱包を解いたときに砂や土がこぼれ落ちたことから、これらの遺物は最近発掘されたものであると考えられる」との見解が述べられ、「押収した遺物の中には、紀元前1900年頃のものと見られる麻の布をまとった副葬品の木製の人形や、やはり埋葬品の金のアミュレット(魔除けのお守り)があった」と記載されている。 さらに、「密輸品に関する書類を偽造するための材料も所持していた」として、オークションハウスで競売にかける際に偽の来歴書を用いようとしたと指摘。裁判資料には、「書類偽造の材料には、数十年前のものと見られる透かしの入ったエジプトの紙、同じく作られてから数十年前経っていると見られる印章、そしてエルダリルの先祖が仕事場に飾った古美術品を撮影したとする複数の白黒写真も含まれていた」と記されている。 これらに関する当局の鑑識の結果、書類は偽造されたもので、写真はフォトショップの加工で古く見せかけたと断定された。上述のプレスリリースでノチェラ検事は次のように述べている。 「被告はエジプトの略奪文化財を利用し、不法に私腹を肥やすために税関に虚偽の申告をした。他国の文化財を盗み、アメリカに密輸した者は、その罪の責任を問われることを認識すべきだ。我われは、この事件における国土安全保障省と税関・国境取締局の熱意ある重要な活動を称賛し、回収された古美術品をエジプトに送還することを楽しみにしている」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする