足止めされる「米工場増設」…ため息ばかりの韓国バッテリー業界

電気自動車の需要低迷で業績が悪化している韓国バッテリー業界が米国政府の「ビザ取り締まり」でまた大型の悪材料をむかえた。トランプ米大統領は米国内のバッテリー産業などで専門人材が不足する点を指摘しビザ問題を解消するかのように話したが、韓国バッテリー3社が米国で作っている工場の日程遅延などの支障は避けられない見通しだ。 業界によると、LGエナジーソリューションはジョージア州の工場人材だけでなく米国に滞在する従業員全員に、電子旅行許可(ESTA)所持者はただちに帰国し、短期商用ビザ(B1・B2)所持者は出勤中断の措置を取った。新規の米国出張も全面中断した。アリゾナ州の工場をはじめとする現在建設中の工場が打撃を受ける可能性が大きくなった。業界関係者は「今後米国出張時はさらに保守的にビザを管理するだろう」と話した。 他のバッテリー企業も同じだ。LGエナジーソリューションをはじめ、サムスンSDI、SKオンの韓国バッテリー3社は、稼動を始めている工場を除いて54兆ウォン以上を投資し合計3億6800万キロワット時規模のバッテリー生産施設を米国に作っている。LGエナジーソリューションが4カ所、SKオンが3カ所、サムスンSDIが2カ所だ。 これら企業は最近米国での生産能力を基に大型受注を続けてきた。今月初めにLGエナジーソリューションはドイツのメルセデス・ベンツと15兆ウォン規模に達する46シリーズ円筒形バッテリー供給契約を締結したが、来年稼動予定のアリゾナ州工場で生産する計画だった。LGエナジーソリューションが7月にテスラから6兆ウォン規模のエネルギー貯蔵装置(ESS)用バッテリー供給契約を獲得したのも、今月SKオンが米国で初めて大規模ESSプロジェクトを受注したのもすべて現地生産を前提とした。 業界ではビザ取り締まりが長期化すれば納期を合わせられなくなると懸念する。韓国自動車研究院のイ・ジョンドゥ首席研究員は「装備セットアップ(設置)などの日程遅延は避けられないだろう。顧客と決めた納品日程に合わせられなくなれば、最悪の場合、契約破棄まで懸念される」と話した。バッテリー業界関係者は「数兆~数十兆ウォンずつ米国に投資した世界的企業なのに、先に改善勧告のような事前手続きもなく軍事作戦でもするように数百人を逮捕して行ったのは衝撃的。米国のビザ発給スピードを考慮すれば米国に工場を作るのは難しい」と話した。 最近の北米でのESS拡張競争にもブレーキがかかりかねない。すでに作られた電気自動車バッテリー生産ラインをESS用に換えるのも韓国の装備協力会社従業員の出張が必須だからだ。米国が中国製バッテリーに対する関税障壁を高め、韓国バッテリー3社は競争的に現地生産ラインをESS用に転換しているところだった。また別の業界関係者は「工場を作り終えてもまたどんな突発変数が起きるかわからないという不安が大きい」と話した。 それでもバッテリー業界は米国市場をあきらめることはできない。需要低迷の時期を耐え抜く唯一の突破口が北米ESS市場で、需要低迷が終わった後も米国は中国と欧州とともに世界3大電気自動車市場であるためだ。業界関係者は「韓国バッテリーが中国企業などと競争が激しい状況で、中国を牽制する米国市場を逃すことはできない。人工知能(AI)データセンター拡大でESS需要が大きくなった米国は最近韓国バッテリーの最大激戦地」と話した。LGエナジーソリューションとサムスンSDIは8日に米ラスベガスで開かれる北米最大の再生可能エネルギー見本市「RE+2025」に予定通り参加し、ESS用新製品を公開する。

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