電車内でウクライナ難民女性を襲った男、「犯行映像」が拡散…犯人の「驚くべき言い分」とは?(米)

米国内で大きな話題となり、SNSでも衝撃的な映像が注目を集めているこの事件は、8月22日にノースカロライナ州シャーロットを走る列車内で発生した。ロシアによる侵攻後に母国から逃れてアメリカで生活していたウクライナ出身の女性が、何の前触れもなく後ろから男に刺されて死亡したのだ。犯行の一部始終は、監視カメラに記録されていた。 逮捕されたデカルロス・ブラウン・ジュニア(34)は、イリーナ・ザルツカさん(23)を殺害した理由について、「体内の物質」が原因だったと発言。その音声記録は、容疑者の妹トレイシー・ブラウンによって明らかにされた。 この事件は、シャーロットにおける公共交通の安全性や治安、さらには警察力の水準に対する疑問を呼び起こしている。ブラウンは統合失調症と診断されており、過去10年以上にわたって複数回の逮捕歴と有罪判決があるにもかかわらず、今年1月の逮捕後に釈放されていた。 音声はブラウンと妹トレイシーが8月28日に交わした電話の一部で、英紙『デイリー・メール』によって初めて公開された。 統合失調症とされるブラウンは録音の中で、妹に対して事件のことを次のように語っている。「(警察に)調べてほしい。俺の体が何にさらされていたのかを」「やつらが彼女に襲い掛かったんだ。それが、発生した事実だ」「その『物質』を操っていた誰かが、彼女を襲った。それがすべてだ」 ■ブラウンは事件当日、列車で病院に行こうとしていた 「俺の体が何にさらされていたのか、本当に調べなければならない。誰が背後にいたのか、動機は何だったのか」 トレイシーは、「あれだけ人がいた中で、なぜ彼女だったの?」と問いかけた。「彼女はウクライナから来た。ロシア出身でもある。そしてあの国はアメリカと戦争をしようとしている。だからこそ私は理解したい。なぜ、あの人だったのか?」 事件当日に兄が列車でどこに行こうとしていたのかを尋ねると、ブラウンはこう答えた。「ダウンタウンの病院に行こうとしていたんだ。『物質』を取り除いて、狂わないようにするために」 トレイシーはメディアに対し、兄は街中に出るべきではなかったと語っており、ここ数年で何度も精神科に入院して治療を試みてきたとした。母親も同様の発言をしている。 実際、今回の事件で殺人罪で起訴されたブラウンは、ノースカロライナ州の刑事司法システムにおいては何年も前から知られた存在だった。メクレンバーグ郡の裁判所および拘置所の記録によれば、ブラウンは過去10年以上にわたり重窃盗、凶器を使った強盗、脅迫行為など14件の事件で逮捕されている。 そして2015年には懲役6年の判決を受け、2020年に出所した。だが出所から数カ月後には、妹への暴行容疑で再び逮捕。地元のWSOC-TVによると、母親でさえ「息子を社会に出した裁判所の責任」を批判しているという。 ■「人工的な物質が体内に埋め込まれた」と通報していた ブラウンは統合失調症と診断されており、妄想的な行動が継続的に記録されている。今年1月には、「人工的な物質」が体内に埋め込まれ、それが食事や歩行、会話を支配していると何度も911番に通報したとして「緊急通報システムの濫用」で逮捕された後に釈放された。 一方、被害者となったザルツカさんはロシアとの戦争から逃れるため、母ときょうだいと共にウクライナからアメリカにやってきた。家族によると、彼女は渡米後すぐに英語を習得し、現地の生活に順応していたという。 事件当時、列車に乗り込んだザルツカさんは、イヤホンを付けてスマートフォンを見ながら、ブラウンの目の前の席に座った。数分後、ブラウンはポケットからナイフを取り出し、立ち上がって彼女を後ろから複数回刺し、その様子は監視カメラにもはっきりと映っていた。 遺族の代理人は次のような声明を公開した。「言葉にできないほどの悲しみに暮れている。イリーナは平和と安全を求めてこの地に来たのに、あまりにも残酷な形で命を奪われた。その夜、ライトレール列車に乗っていた誰もが被害に遭う可能性があった。二度とこんなことが起きないよう、私たちは尽力する」 なお、ドナルド・トランプ米大統領は、今回の事件を受けて迅速な裁判と死刑を求めている。ブラウンが有罪となれば、最高で終身刑または死刑に処せられる可能性がある。次回の出廷は9月19日に予定されている。

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