冤罪問題取材をドキュメンタリーに 関西テレビ記者の上田さん監督 メディアの暴力性やあり方に苦悩も/兵庫・丹波篠山市出身

兵庫県丹波篠山市出身の関西テレビ報道記者で弁護士でもある上田大輔さん(46)が監督を務めたドキュメンタリー映画「揺さぶられる正義」(129分、関西テレビ制作)が、20日から全国公開される。多くの冤罪を生んだ問題の取材者として悩む自身にカメラを向けた作品。丹波地域近郊は、イオンシネマ三田ウッディタウン(同県三田市)で同日から。 2009年に社内弁護士として関西テレビに入社。16年に報道局へ異動となり、記者1年目から「揺さぶられっこ症候群」(SBS)を取材。赤ちゃんを揺さぶって虐待したと疑われ、親などが逮捕・起訴される事件が相次ぎ、メディアが大きく取り上げた。 その一方で、刑事弁護人と法学研究者らが「SBS検証プロジェクト」を立ち上げ、無罪を訴える被告と家族に寄り添い、事故や病気の可能性を徹底的に調べ、無罪判決が続出する異例の事態が起こった。 上田さんは8年にわたり、医師らの虐待をなくす正義と、同プロジェクトの冤罪をなくす正義の衝突を追い続けた。関連番組を3作発表、日本民間放送連盟賞最優秀賞・ギャラクシー賞選奨など数多くの賞を受けた。 映画はSBS番組の振り返りではない。容疑者逮捕時のセンセーショナルな報道と、その後の裁判報道の扱いの小ささといったマスメディアの暴力性、事件報道のあり方に苦悩しながら、SBS加害者とされた人らを含むさまざまな立場の関係者を取材した自身の姿を映している。 上田さんは「解釈の余地を残した。私が主人公に見えるが、私は水先案内人。記者、弁護人、SBS当事者ら、どの視点から見るかで見方が大きく変わる重層的な作品。見た人それぞれが正義を考えてもらえたら」と観賞を呼びかけている。

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