作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は男性教育者の性犯罪について。 * * * 福岡県の中学校で、教員免許を偽造した疑いのある60代の男性職員が教職に就いていたことがわかった。一部報道では、女子生徒に対し「エロく見える」などと言っていたという。教員免許は原本ではなくコピーの提出でもよしとする学校は多く、さらに都道府県によって免許のフォーマットが違っており、たとえ原本を提出されても「本物かどうか」を見分けるのは難しいのが現実だという。 正直、このニュースを知ったとき、最初に思ったのは「教員免許って、デジタルで全国一律管理してないのかよ!」ということで、怖いことに「性的関心を満たすためにはどんなことでもする」人の執念のようなものに、だんだん“慣れてきてしまっている”自分に衝撃を受けている。この男の目的が明らかになっているわけではないが、“性的な目的”を疑うのが“自然”と思えてしまうくらいに、今、教職者たちの性加害が毎日のように報道されているからだ。 つい先日も、広島県で27歳の男性教師(小学校)が靴にしこんだカメラで10代女性のスカートの中を盗撮した疑いで、現行犯逮捕された。広島県では6月以降にも、39歳の男性教師(小学校)が女子児童を教室に監禁し性加害する様子を撮影した疑いで、複数回逮捕されている。福井県では5月、女子生徒の下着を盗んだとして26歳の男性教師(中学校)が懲戒免職されたことが公表された。愛知県では6月ごろ、42歳の男性教師(小学校)が児童のリコーダーや帽子に体液をかける事件が起きている。愛知県の中学校でも、7月、24歳の男性講師が女子生徒の着替えを盗撮した。同じ愛知県で7月、23歳の男性講師(高校)が女子生徒に性的な動画や写真を送信させていた……。 ……と、都道府県別にネットで検索しつつ書いているがキリがなさすぎる! いったん、「生徒の着替えを教師が盗撮」で検索をかけてみたところ、今年に入って、京都で、福岡で、北海道でも、勤務先の学校で盗撮した容疑で男性教師が逮捕されていた。逮捕されたと報じられている事件が3件というだけで、発覚していない事件もあるのだとしたら……「特殊な男が起こす特殊な事件」と考えずに、国をあげて教育現場を守るための施策が急務なのではないか……。って、あまりにフツーですよね。そしてこんなフツーなことしか言えない自分に悔しさを感じている。もうどこから手をつけていいのかわからないくらい、社会全体が「エロ」という軽さをまとったペドフィリア(小児性愛)の毒に侵蝕されてしまっているのではないだろうかという絶望がこみ上げてくる。