福岡県内で高齢の暴力団幹部が拳銃自殺を遂げたことが話題になっている。刹那的な人生を謳歌しているはずのアウトローだが、自殺も珍しくないという。彼らの心に去来する闇とは――。 ■事務所内で胸を一発 福岡県久留米市で9月16日、地元を縄張りとする指定暴力団道仁会系の傘下組事務所において、この事務所の男性組長(75)が、2階の一室のソファで胸から血を流して倒れているのを挨拶に訪れた組員が発見。その後、搬送先の病院で死亡が確認された。実話誌記者が解説する。 「ソファのかたわらには回転式の拳銃1丁が落ちていました。1発が発射され、弾丸は室内で発見されています。死因は拳銃で胸の銃創による出血死で、発見時の状況などから自殺とみられています。組長が死亡した動機は明らかになっていませんが、道仁会の最高幹部の一角である理事長補佐を過去に務めたほどの大幹部と言われています」(実話誌記者) 道仁会といえば、久留米を中心に福岡県南部を地盤として、80年代には山口組との死者9人にも及ぶ「山道抗争」を繰り広げ、2006年の分裂で離反した九州誠道会(現在の浪川会)とは10年弱にわたって、時にマシンガンなどの重火器を使った血で血を洗う戦いにのめりこんだ。 このように常在戦場ともいえる歴史を歩んだ道仁会だが、武闘派組織で最高幹部まで歴任しながら、組長は人生の決着として自殺を選んだ。暴力団事情に詳しいA氏は、ヤクザと自殺の関係性について一般論として次のように語る。 「ヤクザは後先考えない刹那的な人生に意義を見出す者たちだから、覚悟が決まれば自殺を選んでしまう。その手段は、ヤクザだから最期まで見栄えを大事にして拳銃自殺が多い。山口組の分裂抗争では去就に悩んだ直系組長が拳銃自殺を遂げたし、山一抗争でも幹部を射殺したヒットマンが逮捕を逃れて自殺した。 古いケースでは、戦後直後の広島のヤクザ抗争を描いた映画『仁義なき戦い』で、2作目で北大路欣也が演じたヤクザのモデルの山上光治も、相手方の組員を射殺して逮捕されても逃亡し、警察の追っ手に取り囲まれる中で自ら命を絶った。真剣に命を懸けてヤクザをやってきた者ほど、追いつめられると自殺を選んでしまうのではないか」(A氏) ■意外に多い精神疾患 とはいえ、切った張ったの侠客の渡世を漂流してきたヤクザが、あえなく自殺を選ぶのには疑問も残るが…。 「ヤクザは案外、メンヘラが多いんだよ。実感としては、3分の1ぐらいはなんかしらの精神疾患を抱えているイメージだな。多いのがパニック障害で、ふとした弾みに動悸やめまいに突然襲われるケース。ヤクザが新幹線以外の電車に乗りたがらずにクルマを使うのは、もちろん見栄が大きいんだけど病気の影響もあるのでは。 あとは躁鬱。家庭環境が悪くて、貧困や身内に虐待を受けて育ったケースが多いから、フラッシュバックするみたい。ほかにも、シャブやシンナーの後遺症で妄想が肥大しちゃうケースもある。欧米で抗不安の新薬が開発されると、身内ですぐに噂になって個人輸入して試すというのはよく聞く話だね」(A氏) 精神疾病だけでなく、取り巻く環境の厳しさがヤクザの不安を加速させている。