無罪の元保育士、国と都を提訴 「証拠開示遅れは違法」 東京地裁支部

勤務先の保育園の園児に対する傷害と暴行の罪に問われ、無罪が確定した元保育士吉冨弘敏さん(36)が2日、無罪の根拠となった証拠の開示を捜査機関が遅らせたのは違法だとして、国と東京都に計約8600万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁立川支部に起こした。 代理人弁護士への取材で分かった。 訴状などによると、吉冨さんは東京都日野市の保育園に勤めていた2020年、園児2人の体を揺さぶってけがをさせたなどとして、23年に警視庁に逮捕され、東京地検立川支部に起訴された。 検察側は、保育園の同僚2人の「吉冨さんが暴行した」とする目撃証言を根拠とした。そこで弁護側が同僚らのLINE履歴の元データの開示を求めたところ、検察は「不存在」と回答した。 だが、公判で同僚はLINEデータを警察に提出したと証言。その後の警察官2人の証人尋問でデータが保管されていたことが判明した。 開示されたデータから、同僚らが事件について頻繁にやりとりしていたことが分かり、地裁立川支部は今年4月の判決で「(同僚らの)供述がすり合わされた疑いがある」と指摘。不合理な変遷もあり、信用できないとして無罪を言い渡した。 訴状で吉冨さん側は、遅くとも公判開始から警察官への尋問までの間に検察官がデータの存在を知りながら開示を怠ったと主張。「検察と警察が吉冨さんに有利な証拠を隠し、開示しなかったことにより冤罪(えんざい)の危険にさらし続けた」としている。

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