社説:校内カメラ設置 丁寧な議論欠かせない

子どもたちが安心、安全に過ごせる学校環境の在り方が問われよう。 学校の教室などで教員による子どもの盗撮事案が相次ぐ中、校内に防犯カメラを設置する動きが出始めている。 愛知県みよし市は、全小中学校12校に約200台を設置する方針を決めた。取り付けは廊下とし、更衣室や教室、トイレの出入り口を撮影する。不審な行為があった場合に映像を確認するという。 要所での出入りが録画されることで抑止効果が期待でき、トラブルが起きた際には客観的な事実確認に役立つとする。 一方、映像の管理や保存の方法、目的外利用の防止策をはじめプライバシーに配慮したルール整備が前提だろう。保護者の理解も含め、丁寧な対応が欠かせない。 女子児童を盗撮し、画像を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとされる事件では、昨日までに4都道県6人が摘発された。 長岡京市では男性中学教諭が、教室で着替え中の女子生徒の動画を盗撮した疑いで逮捕された。高知県土佐市、大阪府東大阪市でも勤務校での盗撮が発覚した。 京都や滋賀を含む各教育委員会は、隠しカメラがないかの点検や、校内での私用スマホの使用禁止など防止策に取り組む。 こども家庭庁は先月、子どもと接する事業者に性犯罪歴の確認を義務付ける「日本版DBS」運用の中間案をまとめ、学校などへの防犯カメラの設置を「有効」とする見解を示した。死角となりやすい場所や、子どもと1対1になる場所などを想定する。 大きな論点なのが、教室内での設置だ。 熊本市は今春、教育行政審議会からいじめ抑止策として、教室でのカメラ設置を提案した答申を受けた。一方、東京都では私立小が設置したものの、着替えをする教室でもあったため、保護者の懸念の声を受けて撤去した。 子どもや教師にとって常時監視につながれば、言動の萎縮を招かないだろうか。阿部俊子文部科学相も「教室への設置を広く推奨することはさまざまな議論がある」と慎重姿勢なのは当然だろう。 防犯カメラは万能ではない。どのような方法であれば防げたのか過去の事案を検証し、多様な手立てを模索したい。不審な動きに気付けるよう複数担任制やチームでの対応など、多くの目で子どもたちを見守る体制こそ本筋だ。

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