■「名古屋主婦殺人事件」犯人が抱えた「恨みと未練」 1999年11月13日に起きた、高羽奈美子さん(当時32歳)が刺殺された「名古屋主婦殺人事件」。その容疑者・安福久美子(現69)は、26年もの間、自分に捜査の手が伸びてこなかったことを訝しく思いながら、ひっそりと身を潜め、世間づきあいもほとんどせず、怯えて暮らしていたのであろう。 もし、2010年に刑事訴訟法が改正されなかったら、殺人事件の時効である15年をとうに過ぎ、天下晴れてお天道様の下を歩けたのにと、悔やんだこともあったかもしれない。 事件を起こす約5カ月前、安福容疑者が被害者の夫・高羽悟氏(現69)と高校テニス部の同窓会で会わなかったら、「昔のみじめな思い出」も次第に薄れ、結婚して子供も生まれ、平凡だがささやかな生活で満足していたはずだった。 だが、あの日の出会いが、安福の心の底で“熾火”のように燃え残っていた「恨みと未練」の情念の炎に、再び火を付けてしまったのであろう。 では、安福がそれまで抱えてきた「恨みと未練」とは何だったのだろうか? ■高校時代の同級生で同じテニス部 「愛知県豊橋市内にある昔ながらの喫茶店で、ひと組の若い男女が向かい合って座っていた。高度経済成長も終わりを迎えた一九九九年のことだ。 男は私立大学の学生で、女は受験浪人中の身だった。 『やっぱり君の気持ちには応えられないよ』 男がそう告げると、女は突然号泣し始めた。店内の他の客から見れば、その様子はよくある男女の痴話喧嘩のようにも見えたかもしれない。だが、男は困惑しつつ内心こう思っていた。 『大学まで勝手に押しかけて来て、なんで泣かれなきゃいけないんだよ……』」(『週刊文春』11月13日号) 男は高羽悟氏、女性は高校時代の同級生で同じテニス部だった安福久美子である。