2021年2月にミャンマーで起きた軍事クーデターをきっかけに、約8万6000人が隣国インドに逃れた。だがその多くが避難生活を送る北東部ミゾラム州は中央から隔絶された地域で、難民たちに支援の手は届いていないという。2022年から現地で食料支援などをおこなう佐藤充に、国際社会から孤立し困窮するミャンマー難民の実情を聞いた。 ●2025年11月24日(月)に佐藤氏が制作した、ミャンマー難民の短編ドキュメンタリーの上映イベントが、2025年12月3日(水)には、インドでの支援活動に関するオンライン講演会が開催されます。 2023年12月、ミャンマー西部チン州パレワに暮らすラン(仮名、20代)の村が戦火に包まれた。その前月からミャンマー軍と、仏教徒の少数民族武装勢力「アラカン軍(AA)」との内戦が激化しており、ランの村も両者の戦闘に巻き込まれたのだ。 長らく封鎖されていた道路が1日だけ通行可能になったときを見計らい、ランは2人の子供を連れ、隣国インドを目指した。国境を渡るために乗ったボートは大混雑で、持ってきた荷物はすべて置いていかなければならなかった。道中、戦闘で犠牲になった人々の遺体をたくさん目にしたという。 ようやく国境を越え、インド北東部ミゾラム州にある難民キャンプにたどり着いたものの、住む家もなく、頼る人もいない。地元の行政からわずかな食料支援を受け取ったが、それが尽きてしまったら子供たちをどうやって食べさせていけばいいのか──ランは常に飢えを心配していたという。