「台湾有事」は起こるのか。スタディサプリや予備校などで世界史講師を務める村山秀太郎さんは「台湾の“統一”は中国の長年の悲願。そこには、歴史的・地政学的な背景がある」という――。 ※本稿は、村山秀太郎監修『すぐに使えるビジネス教養 地政学』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。 ■中国の海洋進出 太平洋への出口を確保したい――。南シナ海で横暴を繰り返す中国の思惑 ▼フィリピンと一触即発 海洋進出を図る中国は、その地歩を固めるために南シナ海での勢力拡大を目指しています。結果、周辺国と対立が深まり、東アジアの不安定化を招く要因となっています。 そもそも中国では、1980年代から「2050年までに太平洋の制海権を掌握する」という構想を立てていました。その具体的な戦略概念は3本の列島線で示されます。すなわち第一列島線、第二列島線、第三列島線を段階的に支配して、太平洋の半分を中国が管理しようというのです。 その手はじめとして積極的に進めているのが南シナ海の支配です。中国は2010年代中頃から南沙諸島に複数の人工島をつくって軍事施設を建設し、実効支配しようとしています。それにより、フィリピンとの対立が激化。フィリピンはアメリカとの協力を強化したり、インドと合同演習を行ったりして対抗していますが、中国の威嚇行動は止まりません。 ▼国際裁判所も無視 中国が1953年に発行した地図には、南シナ海のほぼ全域を収める九段線というラインが描かれており、これをもとに権益を主張しています。その主張は2016年に国連仲裁裁判所によって退けられましたが、中国は判決に従おうとしません。 南シナ海には石油タンカーなどのシーレーンの要衝であるマラッカ海峡のほか、海底資源や豊かな漁場もあります。それらを押さえようとする中国に対抗すべく、アメリカなども動いていますが、くい止められていないのが現状です。 ▼ビジネスに役立つ! 日本への石油タンカーなどが使う最大のシーレーンを南西航路といいます。この航路はマラッカ海峡を通過するため、中国に南シナ海を支配されると日本は大変なことになってしまいます。