香港の高層住宅群火災、住民から「防げたはずだ」と怒りの声 死者少なくとも94人に

26日午後に発生した香港の高層住宅群火災で、28日朝までに少なくとも94人の死亡が確認された。また、数十人が重体となっており、約300人の行方が依然としてわかっていない。こうしたなか、香港市民の感情は衝撃から怒りへと変わりつつある。 当局は、建物の窓に取り付けられた劣悪な網やプラスチックシートが、延焼を助長した可能性があるとしている。火災は、高層住宅群「宏福苑(ワン・フク・コート)」の一部の棟で、1日以上にわたって猛威を振るった。 なぜ火災が急速に広がったのか、誰に責任を問うべきなのかという疑問が高まっており、多くの香港市民がこれを「人災」だと呼んでいる。 27日には、敷地内の改修工事に携わっていた3人が過失致死容疑で逮捕された。また、当局は汚職調査を開始した。 火災後にソーシャルメディアで拡散した投稿には、「これは事故ではない」と書かれている。 複数の住民は、火災発生時に火災報知器が鳴らなかったと、BBCの取材で明らかにした。 「宏福苑」の住宅1戸を所有するキコ・マー氏(33)は、改修工事の最中に警報が切られていたと述べた。作業員が建物の出入りに非常階段を頻繁に使用していたためだという。 マー氏は家族と共にカナダに住んでいるが、年に数回、「宏福苑」の所有物件を訪れているという。 「これは防げたはずだ。(中略)多くの人が責務を果たさなかった」と、マー氏はBBCに語り、改修業者が「質の悪い可燃性の資材」を使っていたと主張した。 また、住民はしばしば作業員が喫煙する姿を目撃し、窓の縁に吸い殻を見つけていたと、マー氏は付け加えた。 「火事が起きたらどうなるのかと、みんながずっと問い続けていた。みんなそれをとても心配していた」 今回の火災は、香港で少なくとも過去63年間に発生した火災で、最も犠牲者が多いものとなった。すでに、1962年8月に深水埗区で発生した、44人が死亡し数百人が家を失った大火の犠牲者数を上回っている。 1980年代に建設された「宏福苑」は、香港北東部の大埔区にあり、31階建ての建物8棟で構成されている。このうち7棟が炎上した。住宅部分は現在、補助金が出た後の価格で販売されているが、日常の管理業務は民間に委託されている。 2021年の政府の調査によると、全8棟の1984戸に約4600人が住んでおり、その4割近くが65歳以上だという。 香港消防局は27日、消防隊が住民の救助を試みる際に重大な困難に直面したと発表した。高温や、足場のさらなる崩落の危険、そして狭く混雑した室内空間がその要因だという。 香港は、都市部に狭い住宅が密集していることで知られている。公営賃貸住宅の入居者は、平均でわずか14.1平方メートルの居住空間しか持たない。 火災発生時に「宏福苑」に何人がいたのかは不明だが、数百人の住民が一時避難所に移され、一部は緊急住宅を割り当てられている。 警察は、改修工事で使用された網やプラスチック、キャンバスシートが防火基準を満たしていたか調査している。専門家の中には、マンション棟をつないでいた竹製の足場が火災を助長したとみる者もいる。 こうした足場は香港全域でよく見られるものであり、建設現場で広く使われている。 当局は今年初め、竹材の可燃性や経年劣化を理由に、より頑丈で耐火性のある鋼材の足場に切り替える計画を発表していた。 「宏福苑」の住民は、昨年改修計画が発表された際に懸念を示していた。その懸念に関する報告が現在、インターネットに再浮上し、透明性の欠如をめぐる非難を呼んでいる。 火災発生時に海外にいた別の区分所有者は、この計画を「根本的に怪しい」と述べた。 「(責任者らは)小さな便宜を供与して、何も知らない高齢住民に計画を支持させた」と、その人物はインスタグラムのコメントに書いた。 名字だけを報じることに同意したライ氏は、「宏福苑」の住民が、以前から改修工事の高額な費用に疑問を呈していたと語った。 一部の住民から管理委員会の再選を求める声が上がったが、聞き入れられなかったと、ライ氏は付け加えた。そのうえで、今週の火災は孤立した事例ではないとし、建設会社は「しばしば安全よりもコスト効率を優先する」と主張した。 ライ氏は、10月に香港の中環地区で竹製の足場が燃える火災があったことにも言及した。 「似たようなことが起きると、構造的な弱点があるのではないかという疑問が浮かぶ」と、ライ氏は語った。 香港当局は27日、「大規模修繕」を実施中のすべての高層住宅群で現場を検査し、「足場と建材の安全性」を確認するよう命じた。 (英語記事 'This was preventable': Anger grows in Hong Kong as fire kills at least 94)

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