昨夏以降に首都圏で相次いだ強盗18事件のうち、千葉県市川市の住宅で昨年10月に起きた強盗事件を指示したとして、警視庁と3県警の合同捜査本部は、職業不詳の20代の男4人を強盗致傷と住居侵入の疑いで逮捕し、5日に発表した。一連の強盗事件で指示役の逮捕は初めて。「闇バイト」による広域強盗事件とみて実態解明を進める。 闇バイトによる事件では、一般的に実行役らをSNSで募集して、事件ごとにメンバーが入れ替わり、匿名性の高いアプリを使ってやりとりをして犯罪が繰り返される。 指示役の素性が見えにくく、警察はこうした犯罪グループを「匿名・流動型犯罪グループ(匿流(トクリュウ))」と呼ぶ。 全国の警察は今年1~11月、闇バイトを通じて資金狙いの犯罪に関わったとして匿流4245人(暫定値)を摘発した。 目立つのは口座の売買で、犯罪収益移転防止法違反の容疑で摘発したのは2156人にのぼる。強盗容疑は27人だった。昨年1年間の64人よりも減ったが、依然としてなくなっていない。 一連の強盗事件をふまえ、捜査員が偽の身分証を使って闇バイトに応募して犯行グループに接触する「仮装身分捜査」が検討され、今年1月から実施できるようになった。 一部の都道府県警で行われ、容疑者が摘発された。警察の管理下に置いた口座を犯罪グループに利用させる「架空名義口座」の導入も検討されている。 闇バイトの募集は止められないのか。 ■「勇気を持って今すぐ引き返して」 今年2月末、警察庁から委託されたインターネット・ホットラインセンター(IHC)のガイドラインで、闇バイトを募集する書き込みが「違法情報」に分類された。6月までに、IHCの依頼で事業者が1715件の書き込みを削除した。警察庁はAI(人工知能)でSNS上の闇バイトの投稿を自動で抽出し、警告する返信も送っている。 闇バイトに応募する人への対策も進む。 警察庁は昨年10月、幹部がX(旧ツイッター)の公式アカウントで「勇気を持って今すぐ引き返して」と訴え、警察への相談を呼びかけた。 警察による保護措置は昨年末までに181件、今年も10月までに341件あった。30代の男性がXを通じて口座を売って13万円を受け取ったが、「抜けるなら追い込む」と脅されて警察に相談した事例などがあった。(板倉大地)