西アフリカのベナンで7日朝、軍の一部兵士がクーデターを起こそうとしたものの、未遂に終わったと、パトリス・タロン大統領が同日夕に発表した。大統領はテレビに生出演し、事態は「完全に収拾された」として、国民に安心するよう呼びかけた。 大統領は「我が軍とその指導者が示した義務感を称賛したい。彼らは国家に忠誠を保った」と落ち着いた様子で語った。 この日朝、兵士の一団が国営テレビで権力掌握を宣言したが、政府はその数時間後に反乱を阻止したと発表した。同日午後には、ベナン最大の都市で、政府機関の大半が置かれている主要都市コトヌーで、大きな爆発音が聞こえた。空爆によるものと考えられている。 爆発の前、フライト追跡データは、3機の航空機が東の隣国ナイジェリアからベナンの領空に入った後、帰還したことを示していた。 ナイジェリア大統領の報道官は後に、戦闘機が「空域を掌握し、国営テレビと反乱軍が再集結した軍事キャンプから彼らを排除するため」に進入したと認めた。 ナイジェリアは、隣国でのクーデター未遂を「民主主義への直接的な攻撃」と表現した。 この日のベナンでのクーデター未遂の前にも、西アフリカではクーデターが相次いでおり、地域の安定悪化への懸念が高まっている。 ベナンは旧フランス植民地で、アフリカでは比較的安定した民主国家の一つと見なされてきた。しかし、タロン大統領は政権批判を抑圧していると非難されている。 ベナンはアフリカ最大級の綿花生産国の一つだが、世界で最も貧しい国々に数えられている。 ■事態は完全に収拾と大統領 タロン大統領は7日夕の国営テレビでの演説で、政府に忠実な部隊が「反乱兵が押さえていた最後の抵抗拠点を一掃した」と述べた。 「この献身と動員によって、機に乗じた者たちを我々は打ち破り、国の災厄を回避することができた。この裏切りは決して許されない」と大統領は付け加えた。 「事態は完全に収拾されたので、今夜は平穏に日常を過ごしてほしい」とも、大統領は国民に呼びかけた。 死傷者が出たかどうかは不明だが、大統領は「この無謀な行動の犠牲者、そして逃走中の反乱兵に拘束されている人々」に哀悼の意を表した。 大統領の演説に先立ち、政府のウィルフリード・レアンドル・フンベジ報道官は、ロイター通信に対し、クーデター未遂に関連して14人が逮捕されたと話した。 ベナンのジャーナリストはBBCに、逮捕されたとされる者のうち12人は国営テレビ局のオフィス襲撃に関わった疑いがあると話した。その中には以前解雇された兵士も含まれているという。 ■大統領公邸近くで銃声 複数の目撃者はBBCに、7日早朝に大統領公邸近くで銃声が聞こえたと話した。この時、兵士の一団が国営テレビで憲法停止を宣言していた。 国営放送局で働く一部のジャーナリストが数時間にわたり、人質に取られたとの情報もある。 フランスとロシアの大使館はそれぞれ、在留自国民に屋内待機を呼びかけた。アメリカ大使館は特に大統領公邸周辺を避けるよう促していた。 パスカル・ティグリ中佐が指揮する反乱兵たちは、タロン大統領の政権運営を批判し、まず「北部ベナンの治安状況の悪化への対応」を非難した。 ベナン軍は近年、イスラム組織の「イスラム国」や「アルカイダ」とつながる過激派が南下する中、ニジェールやブルキナファソとの国境付近で損害を被っている。 反乱兵士たちは声明で、「前線で倒れた我々の仲間、そして何よりも彼らの家族の状況を無視し、放置したパトリス・タロン氏の政策」を非難した。 反乱兵はまた、国家資金による腎臓透析の中止を含む医療費削減、増税、政治活動の制限にも言及した。 タロン大統領は「綿花王」として知られる実業家で、2016年に就任。西側諸国と友好関係にあるとされる。来年2期目の任期を終えて退任する予定で、選挙は4月に予定されている。 ベナンの大統領任期は現在2期に制限されている。タロン氏は3期目を目指さないと約束し、後継者としてロムアルド・ワダグニ財務相を支持している。 タロン大統領は経済発展を推進したと支持者から称賛されているが、その政権は異論を抑圧しているという批判もある。 ベナン選挙管理委員会は10月、主要野党候補が十分な推薦人を確保できなかったとして立候補を受け付けなかった。 議会は先月、憲法改正を可決。上院の創設を含む第二議会の設置が決まった。 選挙で選ばれる公職の任期は5年から7年に延長されたが、大統領の2期制限は維持された。 ■西アフリカで相次ぐクーデター 7日のクーデター未遂に先立ち、11月末には、ギニアビサウでウマロ・シソコ・エンバロ大統領が失脚している。ただし、一部の地域関係者はこれが「偽装クーデター」かもしれないとみている。 西アフリカでは近年、ニジェール、ブルキナファソ、ギニア、マリで政変が相次ぎ、地域の安定について懸念が高まっている。 ロシアは近年、この地域との関係を強化している。ブルキナファソ、マリ、ニジェールは西アフリカ地域ブロックの西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を離脱し、「サヘル同盟」を結成した。 BBCモニタリングによると、複数の親ロシア系ソーシャルメディア・アカウントが、ベナンでの権力掌握未遂の動きに関するニュースを歓迎した。 他方、ECOWASとアフリカ連合はどちらも、クーデター未遂を非難した。ECOWASは、ECOWASの待機部隊の一部が「ベナン共和国の憲法秩序と領土保全を維持する」ために派遣されると声明で述べた。 アフリカ連合のマフムード・アリ・ユスフ委員長は、「どのような状況や理由だろうと、(アフリカ連合は)違憲な政権交代をいっさい認めない」とその方針を改めて強調した。 (英語記事 Benin coup thwarted by loyalist troops, president tells nation)