2025年の秋田をキーワードで振り返る企画、今回のキーワードは『審判』です。16年ぶりの新たなリーダー誕生に国会議員夫妻の決断。2025年の選挙と今後の政治の行方を考えます。 ◇秋田県のニューリーダー誕生◇ 鈴木健太県議会議員(当時): 「私、鈴木健太は2025年春に行われる次期秋田県知事選挙に立候補することを決意した」 猿田和三副知事(当時): 「これまで培ってきた行政経験と多くの皆さんと培ってきたネットワーク。これを十分に生かしていくことが私の使命」 3月、任期満了に伴う秋田県知事選挙が告示されました。4期16年務めた佐竹知事が退任を表明し、新人3人が立候補しました。 選挙戦は、元県議会議員の鈴木健太氏と元副知事の猿田和三氏の事実上の一騎打ち。 猿田氏が与野党にかかわらず幅広い組織の支援を受けた一方、鈴木氏は所属していた自民党を離党して選挙戦に挑みました。 自民党は真っ二つに割れ自主投票に。 それでも鈴木氏は、親交のある県議らとともに訴え続け、応援の輪は日に日に大きくなりました。その結果、猿田氏に8万票余りの差をつけ、初当選を果たしました。 16年ぶりに誕生した秋田の新リーダーが真っ先に取り組むとしたのは「人口減少対策」です。 鈴木知事: 「2028(令和10)年度までに社会減少数を1000人台までに縮減させることを目標に掲げ、その達成に向け一刻の猶予もないと認識している」 7月にはマーケティングの手法で人口減少・観光振興といった課題解決を目指す専門部署「マーケティング戦略室」を設置。2026年度からの次の総合計画にもマーケティングの視点を反映する方針です。 一方で、船出の年は思いもよらないことの連続でした。 4月には県発注の道路工事を巡る贈収賄事件で、県職員の男(当時)が収賄の罪で逮捕、5月には秋田市の海浜公園で風力発電の風車のブレードが落下する事故が発生しました。 8月から9月にかけては、記録的な大雨で各地で甚大な被害が発生。 また、三菱商事連合が秋田県沖の洋上風力発電事業からの撤退を表明し、鈴木知事は「よもや撤退ということはないだろうと思っていたので、大変な衝撃を持って受け止めている」と述べていました。 秋はクマの目撃情報が爆発的に増加した上に被害が相次ぎ、鈴木知事は防衛省に自衛隊の派遣を要望。国から異例の支援を導き出しました。県は今後、予防的なクマの個体管理・捕獲などに取り組む方針です。 県の課題をどう導き、数値目標達成をいかに手繰り寄せるか。今後の鈴木知事の手腕に注目です。 ◇県都・秋田市にもニューリーダー◇ 一方、秋田市長選でも、元県議の新人・沼谷純氏が5期目に挑戦した現職に歴史的勝利。新しいリーダーの舵取りが始まりました。 沼谷純氏: 「閉塞感・課題が多いという中で、何とかしてほしいという思いの表れが、変化あるいは若い人間に思い切ってやってみてほしいと、託す思いがあったように感じる」 就任後は、八橋運動公園への新設で進んでいたスタジアム整備計画にストップをかけ、既存施設の改修案を新設と並行して検討しました。そして外部機関の調査を踏まえた比較検討の結果、再び新設に舵を切る方針です。 整備主体は、費用負担は。浮かび上がる様々な課題にどう向き合うのか、沼谷市長の真価が問われています。 ◇参院選で無所属の現職再選 夫は引退表明◇ 7月の参院選は、無所属の現職・寺田静氏が自民党候補を突き放して再選を果たしました。 政党や団体に所属せず「自らの思い」に従って活動する寺田氏。10月の首相指名選挙では、自民党総裁の高市早苗氏に投票し、話題に上りました。 寺田静参院議員: 「政治信条や政策的なところで距離がある存在であると思ってきた。それが故に非常に悩んだが、子供たちにとって、一度女性が首相になることを見せられるのは大きいのではないかと。女性だったから駄目だったと言われることがないよう運営していってもらいたいし、第二、第三の女性首相が生まれるような下地をつくってもらいたいという思い」 こうした中、夫で衆院議員の寺田学氏が9月、政界引退を表明しました。子育てや親の介護と県内活動の両立は難しく、夫婦で話し合って決めました。 寺田静参院議員: 「2003年の夫の初当選から支えてきて非常に残念な思いだが、家族の状況や、国会議員という仕事の特殊性を考えれば、仕方のないことなのかなと気持ちを整理しているところ」 一方で、夫の引退発表に対する周囲の反応で決意したことがあるようです。 寺田静参院議員: 「『辞めて何をするの』と言われ、家事、育児、介護、このあたりが大変だという話なのに、それが理解できない、大変さを知らない人たちが政策を作っていていいのだろうかと。自分自身の経験を通して見つめながら、政策の実現・立案を図っていくことが何より求められていることだろうと思っているし、今後6年間はそうしたところに注力していきたい」 ◇衆院議員定数の削減はどうなるか◇ 2026年は「国会議員」を巡る大きな動きが予想されています。 与党は衆議院の議員定数を1割削減する法案を今国会に提出しました。与党は今国会での成立を見送る方針ですが、法案では、1年以内に削減対象などの結論が出ない場合は「小選挙区で25、比例代表で20議席減らす」などとされていて、自民党の試算では、秋田の小選挙区が3から2に減る見通しです。 次の衆院選は県内の構図ががらりと変わる可能性があります。 なお、現職の衆院議員の任期は2028年10月26日までですが、任期満了による選挙は戦後は1976年の1回だけで、このほかはすべて解散によるものです。