認知症女性に性的暴行、元介護士に実刑判決 専門家「氷山の一角」

大阪府内の介護施設で、認知症の女性を次々に襲って性的暴行を加えたとして、不同意性交等などの罪に問われた元介護士の男性(55)=控訴中=に拘禁刑7年の実刑判決が言い渡された。 男性は入所する70~80代の女性4人が認知症で意思表示できないことに乗じて、下半身を触るなどの性的暴行を加えたとして計12の事件で逮捕、書類送検された(うち2件は起訴猶予処分)。いずれも夜間帯に繰り返していたという。 ◇被害を訴えられない卑劣さ 男性の関与は、施設内に設置された防犯カメラ映像の解析から裏付けた。 公判で男性は「認知症だからすぐ忘れる。ばれないと高をくくっていた」と説明した。 判決は男性が女性らを「性欲のはけ口」にしたと認定。「人格や意思を無視した自己中心的で卑劣な犯行」と厳しく非難した。 こうした高齢者施設内の性犯罪について、専門家は「氷山の一角だ」と指摘する。 厚生労働省の統計によると、施設職員による高齢者への性的虐待は2023年度に63人の被害が確認された。 しかし、高齢者施設に対する独自の認証・評価などを行う公益財団法人「Uビジョン研究所」(東京)の本間郁子理事長は「実態はほとんど見えていない」と語る。 外傷が残るような身体的虐待などとは違い、性犯罪は周囲に気づかれにくい。 今回のように人目のない夜間などに認知症の人が狙われる事件も多いといい、「被害者が声が出せないほか、たとえ本人が被害を申告できても容疑者から『妄想だ』と言い訳されてしまう。被害を家族にも言えないという意識がある」 介護職員の人手不足も一因にあげられる。一般的に着替えや入浴は同性による介助が基本だが、守られていないケースも少なくないという。 今回の事件は防犯カメラの映像が容疑者逮捕につながった。ただ、居室などプライベートな空間へのカメラ設置は「人権やプライバシー保護の視点から慎重に検討する必要がある」と話す。 本間理事長は「虐待防止を呼びかける職員教育だけでなく、介護のプロとして利用者の尊厳を守る意識のあり方について、日ごろから職場内で話し合えているかが重要だ」と強調する。【斉藤朋恵、大坪菜々美】

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