社説:退職代行サービス 違法な実態解明し、再発防げ

勤務先と接触せずに、退職したい-。そうしたニーズに応える退職代行業者が急増する中、違法行為の疑いで事業者が摘発された。 拡大する業界ではトラブルが散見されており、利用者保護の在り方が問い直されよう。 警視庁は今月、弁護士法違反(非弁活動)容疑で、サービス最大手「退職代行モームリ」の運営会社の社長と、妻の退職支援事業部長を逮捕した。 弁護士資格がないのに、報酬を得る目的で、20〜50代の公務員ら6人の退職交渉に関する法律事務を弁護士に紹介した疑いが持たれている。 代行サービスは、利用者に委任されたスタッフが会社側に退職の意向を通告する。ただ、給与未払いや有給休暇消化の交渉など法的業務が残ることが少なくなく、その代行はできない。 弁護士法で、無資格者が報酬目的で法律事務をしたり、あっせんしたりすることを禁じている。 弁護士が依頼者より紹介者の意向を優先すれば、適切な法的サービスを受けられず、不利益が生じる懸念があるからだ。 警視庁によると、弁護士側が同社に「労働組合への賛助金」の名目で、1人当たり1万6500円の紹介料を支払っており、取り決めた覚書を押収したという。 社長は「違反とは思わなかった」と否認しているが、「キックバックが入る」として社員に紹介を促し、口止めもしたとの証言があるという。 元顧問弁護士ら3人も弁護士法違反(非弁提携)で書類送検された。別名目の支払いで偽装工作するなど悪質である。 両者の関係性を含めて、徹底的な真相の究明が欠かせない。 退職代行業は近年、働き手不足による「売り手市場」を受け、転職しやすい状況を追い風に急成長している。 厚生労働省の調査では、3年以内の離職率は2021年大卒で3人に1人を上回る。民間調査で、23〜24年の転職者800人のうち、6人に1人が退職代行を利用したという。 業者は100社を超えるとみられ、非弁行為について東京弁護士会が以前から注意を促していた。他社にも問題はないか、業界や弁護士会などは調べる必要がある。 人手不足による業務の増加や採用難で、会社側に退職を容易に認めない空気も広がっているという。上司のパワハラなど理不尽な労働環境から逃れるため、代行業が拡大した面が指摘されている。 代行できる業務は限られており、退職交渉の認められる弁護士や労働組合と役割を分担し、きめ細かいサポートができるか。業者側に問われている。 利用者は代行任せにせず、労働制度を学ぶなど、自分を守るすべを身につけておきたい。

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