「首相を殺しても逮捕されない」イギリス王室を守る鉄壁の「免責特権」とは?

チャールズ英国王の弟であるアンドルー元王子が公務中の不正行為の疑いで逮捕され、事情聴取後に釈放された件は大きな衝撃を巻き起こした。 警察は捜査の詳細を明らかにしていないが、米政府が1月末に公開したいわゆるエプスタイン文書を基に容疑を固めたようだ。アンドルーは英政府の貿易特使を務めていた時期に、実業家のジェフリー・エプスタインに自国の機密情報を与えた疑いが持たれている。エプスタインは未成年者に対する性的虐待などで有罪となった人物だ。 今回の逮捕は性的暴行など性犯罪の容疑によるものではない。 アンドルーは以前にも性的虐待のかどでエプスタインの少女買春の被害者に訴えられたが、2022年に和解している(和解金額は非公表で、アンドルー側は法的責任を認めていない。被害者のバージニア・ジェフリーは昨年4月に自殺した)。 エプスタイン文書に名前があっても、その人が罪を犯したとは限らない。これまでアンドルーはエプスタイン絡みでの違法行為を全て否認し、貿易特使の職務を自身の利益のために利用したことは一切ないと主張している。 アンドルーは2001年に当時のトニー・ブレア政権の要請を受けて、貿易特使に就任した。無報酬の公務だが、在任中は盛んに外遊を重ねた。 英政府が王室メンバーを貿易振興のために外国に送り出すことは珍しくない。外国、特にイギリスと同じ立憲君主制の国との交渉では、王族など高位の人物を送り込めば話がまとまりやすい。 実際、ブレア政権は相手国の「王族や元首、閣僚や企業トップと直接交渉を行う」にはアンドルーの「特別な地位」が大いに役立つと期待していた。 アンドルーは2011年にエプスタインとの関係が報道されると貿易特使の任務を退いた。エプスタインが有罪を言い渡されたのは2008年だ。 王室メンバーには免責特権はないのだろうか。君主は「主権免責」(国家は原則として他国の裁判所に服さないという国際法の理念)で守られ、刑事・民事を問わず何らかの法的責任を問われることは一切ない。 19世紀のイギリスの憲法学者、アルバート・ダイシーは君主は「首相の頭を銃弾で撃ち抜いても」起訴されることはないと断言した。王位継承権第1位のプリンス・オブ・ウェールズの称号を持つ人(現在はウィリアム皇太子)もいくつかの違法行為に対し免責特権を持つ。

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