「アメリカ軍に憧れがあった」――。とらわれの身となったエリート商社マンは、警察の取り調べに対してこう動機を語ったという。 神奈川県警は2月19日、米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に不法侵入した疑いで東京都内に住む住友商事社員の45歳の男を逮捕した。男は送検時の様子がバッチリ捉えられるなど大騒ぎとなっているが、一方で、警視庁が同時期に摘発した米兵関与の窃盗事件では、米兵の身柄が書類送検にとどまっていることはあまり知られていない。同じ〝犯罪者〟なのに、この扱いの落差の背景にあるのは何なのか? 【憧れ高じて米軍基地に侵入】 「やはりスパイ防止法が早急に必要」「わざわざ偽造ID用意って絶対なんか意図があるやんけ」――。事件の一報が報じられた直後、X上には、こんな〝界隈〟の投稿があふれた。 神奈川県警が2月19日、米軍横須賀基地に偽造したIDで不法侵入したなどとして逮捕したのは、東京都港区の住友商事社員の水野圭隆容疑者(45)だった。新聞・テレビ各社の報道によると、水野容疑者は、2025年10月、米海軍の「第7艦隊」が本拠を置く横須賀基地に偽造したIDを使って侵入したとする刑事特別法違反の疑いがもたれている。 「水野容疑者は中東担当の商社員としてイラクに駐在。日本に一時帰国した際に犯行に及んだとみられています。米陸軍軍曹であると偽ってIDカードを偽造。カードを使って基地内で借りたレンタカーで基地の敷地外に出て、東京都内を走行していた際に交通違反の取り締まりを受けて犯行が露呈しました」(大手紙社会部記者) 県警の発表によると、水野容疑者は、逮捕時の弁解録取で容疑を認めた上で、「米軍に憧れがあり、少しでも触れあいたいと思い入った」などと動機を語ったとされる。 「台湾有事を巡る米国と中国の緊張が高まっている時期でもあって、中国の諜報機関など水野容疑者の背後関係を取り沙汰する声も上がりました。ただ、彼は一部では有名な筋金入りの『軍事マニア』で、米軍に並々ならぬ愛着を持っていた末の犯行だったとみて間違いないようです」(前出記者) 水野容疑者の逮捕容疑となったのは、刑事特別法違反(刑特法)という罪名だったが、そもそもこの法律の前提となるのが、日本に駐留する米兵と米軍属、その家族らの地位を定めた「日米地位協定」なる条約だ。同協定の第2条では、日米安保条約6条の規定に基づき「日本国内の施設及び区域の使用を許される」とあり、刑特法によって基地内へのむやみな立ち入りなどを禁じているのだ。 「刑特法では、施設内への立ち入りを禁じた第二条のほか、米軍の軍事裁判所の被告に関する証拠を隠滅することを禁じた『証拠隠滅』、軍事裁判所での証言の『偽証』、兵器や弾薬の損壊を禁じた『軍要物損壊』、米軍の機密漏洩を規制する『機密漏洩』にそれぞれ刑事罰が科されることになっています。さらに、米軍の制服や衣服をみだりに着用することも刑事罰の対象になるとされているのです」(前出記者) 米軍基地が集中する沖縄では、基地反対派の抗議活動でこの刑特法の適用を受けた抗議者が逮捕されることがしばしばあり、法律になじみの薄い本土との基地負担の違いを浮き彫りにしているともいえる。 法律そのものが、安全保障政策を米国に依存する日本の現実を象徴しているともいえるが、この「ミリオタ事案」が発覚する直前に明らかになった事件の成り行きを追うと、日米間の不平等はより一層クリアに見えてくる。 【空き巣常習容疑も身柄拘束なし】