「油を降り注ぎ、主イエス・キリストの名によって清めました」 男は、自身が創立した宗教団体の集会で、このように語っていた──。 3月5日、千葉県警成田署の前には、テレビ、新聞、雑誌など多くの報道陣が集まっていた。午前8時20分過ぎ、護送口から姿を見せた男は背筋をピンと伸ばし、しっかりした足取りで歩き、本誌カメラマンをはじめ報道陣を見ることなく護送車に乗り込んだ。 「3月4日に逮捕されたのは、米国在住の職業不詳、金山昌秀容疑者(63)です。直接の逮捕容疑は、11年前の’15年3月、千葉県の香取神宮で、国の重要有形文化財である『桜門』など十数ヵ所に油のようなものをまいた建造物損壊容疑。この当時、成田山新勝寺(同県成田市)や二条城(京都市)、東大寺(奈良市)など16都府県、48ヵ所で同様の事件が起きていて、県警は同一犯の可能性を視野に入れて捜査を続けていました。 その後、千葉県警が防犯カメラの映像などから、香取神宮の事件に関し金山容疑者の犯行と特定。逮捕状を取得しましたが、事件後に米国に渡っていたため、現地当局に身柄引き渡しを求めていました。この間、金山容疑者は米国で普通に医師活動を行い、日常生活を送っていましたが、日米犯罪人引き渡し条約に基づき、ようやく日本の警察に引き渡されたのです」(全国紙社会部記者) 金山容疑者は渡米後、ニューヨークで子宮内膜症のクリニックを運営。地元での医師としての評判は、かなり高かったという。その一方で、’13年5月にキリスト教系収容団体『IMM(インターナショナル・マーケットプレイス・ミニストリー)』を設立。過去に信者向けに行われた団体の集会では、 「清い場所ではありません。神社は悪霊の巣窟です」 と話し、続けて冒頭のように、自身が油をかけたことを認める発言をしており、その記録映像も残っていた。 日本への移送前、アメリカのJFK国際空港で日本の記者から「メディアに言いたいことは?」と声をかけられると、「大丈夫です」と答えていた金山容疑者。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に話を聞いた。 「金山容疑者は犯行後、渡米しました。アメリカと日本の間に犯罪者引き渡し条約があるとはいえ、殺人や不同意性交罪など重罪ではなく、双罰性(編集部註:引き渡しの対象となる行為が日米両国で犯罪に該当しなければならないという条約上の要件)も満たさないので、アメリカは引き渡しに積極的ではありませんでした。同容疑者は、そういったことも熟知しており、さらに有能な弁護士も雇っていたようです。連邦裁判所に身柄引き渡しの阻止を求めて争っていたため、ここまで時間がかかったのでしょう」 今後、裁判の流れはどうなるのだろうか。 「建造物損壊罪で余罪もあると思いますが、それほど大きな罪にはならないでしょう。あとは、神社が民事で損害賠償を請求するかどうかです。被害に遭ったのは国の有名文化財ですし、数十ヵ所に及ぶ可能性が高い。今後、模倣犯を出さないためにも、しっかり被害を請求したほうが良いと思います」 調べに対し金山容疑者は「異議はありません」と容疑を認めているというが、被害に遭った神社仏閣はどのような判断を下すのだろう。経過を見守りたい。