またも起きた“ストーカーの凶行” 池袋ポケモンセンター刺殺事件は防げなかったのか

3月26日、東京・池袋のポケモングッズ販売店で、21歳の店員の女性が元交際相手に殺害された。長年、ストーカー事件の被害者や加害者のカウンセリングに取り組み、2026年2月、がんのため亡くなった小早川明子さん(享年66)は対策の必要性を訴えていた。 ◆ストーカーの凶行防げず 今回の事件は、26日午後7時すぎ、豊島区東池袋の「サンシャインシティ」にある「ポケモンセンター」で、店員の春川萌衣さん(21)が広川大起容疑者(26)に首などを刃物で刺され死亡し、広川容疑者も自分の首を刺して死亡した。 広川容疑者は春川さんの元交際相手で、2025年12月に春川さんは「広川容疑者に付きまとわれている」と警視庁へ相談し、自宅前に現れたところをストーカー規制法違反の疑いで逮捕されていた。その際、広川容疑屋は刃渡り10センチほどの果物ナイフを所持していて、「自殺するつもりだった」「復縁をしたかった」などと話していた。 その後も容疑者にはストーカー行為の禁止命令が出されるなどしていて、被害者には警察が定期的に連絡を取り、自宅には防犯カメラも設置されていたが、犯行は防げなかった。 ◆憎悪型ストーカーの恨みは5年続く 小早川さんはNPO法人ヒューマニティの理事長として、カウンセリングを行っていて、筆者は、23年1月に福岡市で38歳の会社員の女性が元交際相手の男に殺害された事件や、24年5月に東京・新宿区のタワーマンションで25歳の飲食店経営の女性が客だった男に殺害された事件などで、小早川さんを取材する機会を得た。 福岡市の事件では禁止命令が出されていて、新宿区の事件ではストーカー規制法違反で逮捕されていたが、いずれも被害者に強い執着を持っていた。 小早川さんはこうした憎悪型ストーカーの怒りや恨みは経験上、5年は続くのでしばらく何もなくても油断することは危険だと語っていた。 「関心がなくなったわけではないので、被害者のSNSなどを見ている可能性もあります。自分の生活がうまくいってなくて、相手が幸せそうに見えたら怒りが湧いてきます。その落差を感じると、いつ発火してもおかしくありません」 被害者の相談の中には、ストーカー事件として立件され、5年間何もなかったのに、気がついたら加害者が自分のマンションに住んでいたということもあったという。 加害者のカウンセリングでは、事務所の近くに住んでもらって、何百回と話を聞き、精神科医も紹介し、その後は地方に住んでもらい、生活保護の申請をして生活基盤ができでようやく次の人生に踏み出せたこともあったという。 小早川さんのカウンセリングは長い時間をかけて、ほぼ毎日、メールなどで日常生活の報告を受け、時には食事をするなど自然な対話を重視していた。 「被害者と交際するなど幸せな時間があればあるほど、失ったときには絶望する。その苦しみからストーキングを行い、いったんは収まっても、当時を思い起こさせる刺激を受ければ、数年後であっても気持ちが復活することもある。だからこそ長い時間の付き合いが必要なのです」 小早川さん自身、過去に知人から仕事をめぐって恨まれて脅迫されるストーカーの被害者だった経験があった。 「被害者としてストーカーの怖さが分かっているからこの仕事ができた」と語っていた。 ◆「人に死んでほしくない」 小早川さんは長いカウンセリングの経験の中で、忘れられない事件があった。 2012年に神奈川県逗子市で女性が元交際相手に殺害された事件では、女性に大量のメールが送りつけられていたが、当時のストーカー規制法では取り締まることができず、女性から相談を受けていた小早川さんは、相手を刺激したくないという意向をうけて動けなかった。 「これまで事案に介入して、被害者が亡くなったことはありませんでした。自分の踏み込みが足らずに亡くなったのだと思い、自分を責めました」 「人に死んでほしくないのです」 また、小早川さんは、カウンセリングでは衝動を抑えることが難しい危険なストーカーには、治療の義務づけや治療施設が増えることが必要だと訴えていた。 警察庁によると、2025年1年間の警察へのストーカーの相談は2万2881件で、加害者に出した禁止命令は3037件、ストーカー規制法違反の検挙は1546件でいずれも過去最多となった。しかし、警察が働きかけて実際に加害者が治療やカウンセリングを受けたのは全体の1割以下にとどまっている。 (フジテレビ上席解説委員 青木良樹)

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