機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件で、勾留中に死亡した同社元顧問の男性(当時72)の遺族が6日、男性の逮捕や勾留を認めたほか、保釈請求を退けた裁判官計37人の判断は違法だったとして、国に約1億7千万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。 亡くなったのは相嶋静夫さん。軍事転用可能な機器を中国に不正輸出した疑いで2020年3月、同社社長ら2人とともに警視庁に逮捕された。その後、勾留中に胃がんが見つかった。 相嶋さんの保釈請求は計8回に及んだが、裁判所は「証拠隠滅のおそれ」などを理由に繰り返し退けた。相嶋さんは保釈を認められないまま21年2月に亡くなった。その後、社長ら2人の起訴は取り消された。 遺族側は訴状で、相嶋さんに不正輸出の容疑はなく、逃亡や証拠隠滅のおそれもないと認識できたとして、身体拘束を認めた裁判官計37人の判断は違法だったと主張。身体拘束によって治療を受けるのが遅れ、死亡に至ったとして「37人が、それぞれどのような具体的根拠に基づいて身体拘束を認めたのかを訴訟の中で明らかにすべきだ」と訴える。 東京高裁は昨年5月、一連の捜査は合理的な根拠を欠いており違法だったと認め、都(警視庁)と国(東京地検)に計約1億6600万円の賠償を命じた。警視庁や警察庁、最高検は8月に捜査の検証報告書を公表し、警視庁や検察幹部が相嶋さんの遺族に謝罪した。 ただ、裁判所は、逮捕や勾留を認め、保釈請求を退けた判断について検証していない。原告らは「検証を欠いたままで再発防止は期待できない」とも主張している。(黒田早織)