2025年5月7日、東京メトロ南北線東大前駅(東京都文京区)で、20歳の大学生の男性が刃物で切り付けられた事件を覚えているだろうか。この事件で、43歳の自称自営業の男が、殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、9月には責任能力があるとして起訴された。 男は、「親から教育虐待を受け、不登校になり苦労した。東大を目指す教育熱心な親たちに度が過ぎると、私のように罪を犯すことを世間に示したかった」と供述。この事件により、“教育虐待”が改めて注目される契機となった。 ちなみに、こども家庭庁は「児童虐待」を以下の4種類と分類している。 〇身体的虐待:殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など 〇性的虐待:こどもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など 〇ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など 〇心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、こどもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティックバイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など 教育虐待とは、「勉強」「スポーツ」を介し、心理的虐待や身体的虐待が行われる状況だ。しかし、多くは「良かれと思って」「子供のために」行われることが多いのが難しい。子供の心身が耐えられる限度を超え、保護者が学習や訓練を強制するその「限度」とは何か。小学校受験、中学受験が過熱している。中には勉強に向いていない子供が取り組むケースもあるだろう。多くの子供は、親を愛している。「親の望む結果を出せなかった」という思いが、心の傷になる可能性もゼロではない。 キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「今、子供と音信不通になったり、子供から縁を切られた親が、探偵に“無事かどうか確認してほしい”と依頼するケースが増えています。その背景に教育虐待があることが多いです」と言う。 山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。山村さん連載「探偵が見た家族の肖像」「探偵はカウンセラー」には、多くの人が抱える悩みを解決するヒントが含まれている。GWには家族とともに過ごす時間が増える人も多いことだろう。そこで、これまでの連載よりGWスペシャルとしてテーマに合わせてお届けする。第1回の「家庭内格差」、第2回の「地方移住と親の介護」、第3回の「フリマとお金」に続き、こどもの日にお送りするのは「教育虐待」がテーマだ。 今回山村さんのところに、相談に来たのは58歳の教員、修吾さん(仮名)。「息子と連絡が取れないのです。探してもらえないでしょうか」と電話があった。話を聞くと、息子への教育に大きな理想を抱えていた。 山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWeb連載など様々なメディアで活躍している。