静岡地裁は1日までに、覚醒剤取締法違反の罪に問われた静岡市葵区の無職70代男性に無罪判決を言い渡し、谷田部峻裁判官(現・横浜地裁)は強制採尿手続きなど県警の捜査に違法性があったと認めた。県弁護士会は同日、県警や静岡地検宛てに抗議を訴える会長声明を送付し、記者会見で担当弁護士が明らかにした。一方、男性の尿からは覚醒剤成分が検出され、逮捕・起訴、公判では使用したと認めていた。 判決は3月17日付。検察側は控訴せず、4月1日に男性の無罪が確定した。公判では2023年1月下旬ごろから同2月9日までの間に、覚醒剤のフェニルメチルアミノプロパンまたはその塩類若干量を使用したとする起訴内容は争わず、強制採尿手続きと、とどめ置きの適法性が争われた。 判決は対応した警察官の証言を検討した結果、強制採尿令状の請求のために提出された捜査報告書で男性が発言していない虚偽内容が記載されたと認定。男性が腕の注射痕の確認をかたくなに拒否し、覚醒剤に関する質問に一切答えないとした記載が虚偽の事実とし、裁判官の判断を大きくゆがめたと指摘した。 強制採尿令状執行のため男性を約4時間、現場付近にとどめ置いた違法性も認めた。将来の違法捜査抑制の見地から、証拠として排除し、無罪を言い渡した。 県弁護士会の村松奈緒美会長は会見で「本来は罪を犯したのであれば適正に判決を受けるべきだが、将来の違法捜査を防ぐためには個別の無罪判決はやむを得ない」と語った。 県警は「判決内容は承知している」とし、「法と根拠に基づく捜査を徹底するよう指導して参ります」とコメントした。