’25年5月1日(木)13時半ごろ、大阪市西成区千本中の市道でSUV車が小学生の集団に突っ込むという痛ましい事故が発生した。当初、大規模な事故と思われていたが、犯人の供述から無差別殺人を企てたということが判明し、事態が一変した。 殺人未遂容疑で逮捕されたのは、東京都東村山市の無職、矢沢勇希容疑者(28)。警察の調べに対し、「全てが嫌になった。苦労せずに生きている人が嫌だった。人を殺そうとして車で突っ込んだ」と供述した。矢沢容疑者はこの周辺に土地勘も無かったという。 事件発生時の様子を目撃者から聞くことができた。 ◆「子供らは頭から血を…」 「この辺は狭い道が多いから、普段から車が来ると自転車も歩行者も道路の脇によけるんです。ところが、事件を起こした車は右に左にフラフラと走ってるなと思ったら、突然、ブレーキを踏むことなく小学生の列に突っ込みました。子供らは小学校側を歩いてましたけど、そっちめがけてやったんでびっくりしました。 すぐに駆け寄りましたけど、子供らは頭から血を流してたり、大声で泣いていたりと、ホンマにとんでもない状況でした。犯人はぼう然としてて声を掛けても反応がなく、学校の登下校を見守る男の人に車から引きずり出されてました」 矢沢容疑者を確保した男性(70)は、30年以上勤務した元大阪府警の警察官で、日頃、登下校の時間帯に小学校周辺で通学の見守りを行っていたという。現場は西成区となるが、新世界などのエリアとは離れた、住之江区や住吉区に隣接する、古くからの街並みを残す住宅街だ。 ◆容疑者の当日の足取り 矢沢容疑者は事件発生2日前の4月29日、新大阪駅近くのレンタカー店でこの車を借りていた。事件当日の5月1日午前8時の返却予定だったが、そのまま無断使用し、事件に至ったという。 使用されたSUV車はトヨタのランドクルーザープラド。新大阪駅周辺にはさまざまなレンタカー店が存在するが、ほとんどの店舗の在庫がコンパクトカーで占められている中、わざわざプラドを指定して借りていた可能性が高い。明確な殺意を抱き、このような車種選定を計画していたとみられる。 また、前述の通り、犯行現場の土地勘はないため、市内に点在する学校周辺をしらみつぶしに走行し、現場に行きついた可能性もある。しかも、犯行現場周辺の防犯カメラから、単独で歩く児童や保護者などは標的とせず、集団で歩く小学生をピンポイントで狙っていたことも新たに判明している。 矢沢容疑者は診療放射線技師として勤務していたが、今年の4月下旬で自己都合により退職したという。精神的に不安定な一面もあったということだが、卑劣極まりない犯行によって体と心に恐怖心を植え付けられた子供たちの一日も早い回復を願う。 取材・文・PHOTO:有村 拓真