読売新聞によると日産は約2万人に達する人材構造調整に向け7月から2カ月にわたり早期退職申請を受ける。早期退職申請案内はすでに従業員に通知された状況で、正確な人数は公開していない。退職申請対象者は45歳以上65歳未満の社員で、開発と生産、デザイン分野の社員は除外される。日産のイバン・エスピノーサ最高経営責任者(CEO)は13日の業績発表とともに全従業員の15%削減、全生産拠点17カ所のうち日本とメキシコ、インドなど7カ所の統廃合を発表している。 日産の希望退職に続き日本工場2カ所まで閉鎖するという計画が伝えられ市場の反応は冷え込んでいる。トヨタ自動車、ホンダに続く日本市場3位の日産が果たして復活に成功できるのかとの疑問のためだ。 日産のルーツは1910年代に遡る。山口県出身で東京大学の前身である東京帝国大学を卒業した鮎川義介(1880~1967)が米国で鋳造技術を学んで1910年に戸畑鋳物という会社を作る。日産の前身になった会社のひとつだ。1933年に日本産業と戸畑鋳物が出資して自動車製造を設立し、これが日産の始まりとなった。92年の長い歴史を持つ日産が事業再編に出た背景には業績不振がある。2023年度には黒字を記録していたが昨年度(2024年4月~2025年3月)は連結基準で6708億円の大規模赤字を出した。電気自動車市場では中国に押され、主力である北米市場で自動車販売が振るわかったためだった。ホンダとの統合を通じて反転を狙ったがこれもまた今年初めに失敗に終わり危機に陥った。ここにトランプ政権の関税爆弾まで予告され日産は来年3月まで最大4500億円に達する関税の影響を受けるだろうという予測のほか業績予想さえ出せない状況になった。 ホンダとの経営統合が失敗に終わった後、救援投手として登板したエスピノーサCEOは日本工場の低い稼動率に注目した。日本経済新聞によると、昨年の日本工場の稼動率は56.7%で、損益分岐点の約80%を大きく下回っており、生産体制再編に出た。日産の生産能力は合計350万台。来年までに80万台、2027年までに20万台を減らし250万台に生産規模を減らすことにした。日産の生産縮小は2万社に達する取引先にも影響を及ぼしそうだ。 一部では現在の日産が「カルロス・ゴーン体制」から続いた悪い経営風土が問題という声も出ている。日産は1999年に業績不振で破綻の危機に陥ると、ルノーからゴーン最高執行責任者(COO)の派遣を受け入れた。工場閉鎖などが盛り込まれた「日産リバイバルプラン」で日産はV字回復をした。だが会長にまで上がった彼が「秘密報酬」を得て長期にわたり収入を過少申告し公金を横領した容疑で2018年に逮捕され、日産の組織文化が問題視された。保釈状態で捜査を受けていたゴーン氏は映画のような脱出劇を敢行してレバノンに逃走し日本を衝撃に陥れたりもした。