改正風営法でメンズエステ業界大混乱の一方で…いま「風俗エステ」が全国で増殖する納得の理由とは

6月28日に施行された改正風営法の影響で、一般的に「風俗エステ」と呼ばれているエステサービス付きの風俗店に変革が起きている。〝日の出の勢い〟と言っていいほど全国規模でオープンラッシュとなっており、今後ますます流行ると見込まれているのだ。 7月1日、東京・大塚に新感覚メンズエステソープ『AZURE(アジュール)』がオープンした。首都圏に30店ものソープを展開する大手老舗・角海老グループのソープ『大塚角海老』がリニューアルしたものである。戦後にソープの経営で大成功した角海老グループが、通常のソープを廃止して「エステ&ソープ」を出店したことに驚いた。『大塚角海老』が開設していた「メンズエステコース」が流行っていたのだろう。 東京では吉原にも「メンズエステソープランド」がある。オイルマッサージとソープのサービスを高いレベルで融合させた『フォーシーズン』だ。 20年前にエステサービスのあるソープとして創業。歴史と伝統があり極めて保守的な吉原では、こういった新奇な店が継続するのは稀なこと。登場した頃は「いつまで持つか」と思っていたが、その予想を覆す人気ぶりで、’20年2月に吉原に姉妹店『サクラスパ』をオープンさせた。『フォーシーズン』と『サクラスパ』は近年は「メンズエステソープ」として店をアピールするようになっている。このように、ここ数年大流行しているメンズエステと波長を合わせる風俗店が、目に見えて増えている。そしてその勢いはここにきてさらに加速する気配を見せている。 背景には、改正風営法で取り締まりが強化されたことがある。マンション型のメンズエステの摘発が増加することが予想されており、不安を感じたセラピストが風俗エステに流れているのだ。 「風営法遵守の店で安全安心に稼ぎませんか」「当店は摘発の心配がなく安心して働けます」などとアピールして求人する風俗エステが多数現れているうえ、「メンエスより稼げるし、毎日(摘発に)怯えることもないから安心」とブログでPRする風俗エステ嬢もみられる。「違法なメンエスで働くより、安全安心な風俗エステで」というメッセージがあふれたことから、風俗エステがメンズエステのセラピストたちの受け皿となっているのである。 ◆従来のメンエスを〝狙い撃ち〟にした改正風営法 風営法改正に伴い、メンズエステから風俗エステに移るのはセラピストだけではない。これまでメンズエステに通っていた客が、取り締まりの強化により、今後は安心して遊べる風俗エステに流れていくのが見込まれている。お気に入りのセラピストについていく客がいるからだ。 風俗的なサービスを裏で提供していても、表向きはNGであるメンズエステに対して、風俗エステは「射精」をゴールとしたプロセスで施術が構成されており、これまでメンズエステで悶々とすることに耐えられなかった客が夢中になる可能性は大きい。 メンズエステはもともと、過去の風営法改正により新規に店舗型風俗店を開業できなくなったために流行った業種である。こういったグレーな業種が、今回の改正では「名指し」された。無許可営業、名義貸し、メンズエステの禁止区域営業などは罰則強化の対象となり、法人に対する罰金刑の上限は200万円から3億円に変更となった。 これを受けて「最大3億円もの罰金となると、過激店のオーナーはみんな廃業するだろう」という声も聞こえてくる。また「風営法改正を機にメンズエステの仕事を卒業した」と宣言するセラピストも出現している。 実際に、改正風営法が施行された直後の6月末に大分市で経営者の男など4人が、7月10日には静岡市のメンズエステ経営者2人が、風営法違反の疑いで逮捕されている。警察によるマンション型メンズエステの摘発は以前からあったが、改正風営法の施行に伴い本格化しているようだ。 対策として、風営法の届け出をしたメンズエステもある。セラピストを守るために派遣型にするという。つまり「出張型の風俗エステ」になるのである。このようにして風俗エステの盛況に拍車がかかっていく。厳しい取り締まりにより従来のメンズエステが淘汰されていくことで〝空前の風俗エステブーム〟が到来する予感がある。 ◆風俗エステは地方でも増殖中 メンズエステと風俗店の〝いいとこどり〟をしている令和時代の〝ハイブリッドフーゾク〟は、今、業界の内外から大きな注目を浴びている。そしてこの傾向は地方にも広がっているのだ。 大阪・難波の店舗型風俗エステ『リチスパ』は、「メンエス以上ヘルス未満の性感メンズエステ」と紹介サイトでPR。また、札幌・すすきのの店舗型風俗エステ『Bellflora(ベルフローラ)』は、全国展開する大手・YESグループの店で、こちらも「メンズエステ」として店を売り出している。 マジックミラーで実物の女性を見て選べる名古屋・池下の店舗型風俗エステ『姉エステ フレグランス』も同様で、こちらは「東海エリア最大級メンズエステ」として店を紹介している。 また、高松・城東町の店舗型風俗エステ『エステ&ヘルス きゅんきゅん』は、メンエスとヘルス、それぞれのよさを追求した「メンエスヘルス」として新登場。「メンズエステでは叶わなかった」「ヘルスでは物足りなかった」という客の声を取り入れたのだ。 このような新店が次々とオープンする背景には、需要の増大がある。性的なサービスがメインとなる他の風俗業種と異なり、リラクゼーションが核にあって、心身のバランスが整い、深い満足感を得られることから、近年風俗エステにハマる風俗ユーザーが続出しているのだ。基本的にセラピストに触ったり攻めたりすることができない店が多いが、「女性を攻めるのが面倒」「自分が受け身になりたい」という男性は意外と多い。風俗エステが持つ「女性にあれこれ尽くしてもらう気持ちよさ」に夢中になる客は後を絶たない。 ◆風俗初心者にも好評 風俗ユーザーがハマる理由の一つに、風俗エステのエステサービスへのこだわりの強さがある。基本的には風俗店だが、顧客満足の最大化を追求する徹底した姿勢は一般のメンズエステに負けていない。 前述した東京・吉原のメンズエステソープ『フォーシーズン』は、すベて高品質のオイルを使用。店内や個室はアジアン調で統一され、香り高いハーブティー、心地よい音楽、癒やしのアロマの香り、そしてセラピストの本格的なマッサージを楽しめる。同店はアロママッサージ、性感サービス、ソーププレイの3つを複合した独自の究極サービスを堪能できるとあって人気が高い。そして類似のコンセプトを取り入れる店も増えている。7月4日に茨城・土浦にオープンしたバリ風アロマエステ&ソープ『BaliSpa(バリスパ)』も、その一つといえるだろう。 風俗エステは遊び慣れていない風俗初心者にも好評である。まだ女性経験が少なく、テクニックに自信がない場合は、無理に攻めなくてもいい風俗エステはもってこいなのだ。 さらに、他の風俗業種に比べプレイの内容がライトで働きやすいため、容姿のレベルが高いセラピストが集まりやすい。そのうえサービスがソフトなことからソープやヘルスよりもリーズナブルな基本料金設定になっている店が多く、昨今の物価高の中で遊ぶには最適ともいえる。特に店舗型はホテル代がかからないうえ、予約していなくてもフラリと立ち寄れるので利用しやすい。 改正風営法の施行によってマンション型のメンズエステの取り締まりが厳しくなったことも相まって、風俗エステは今後さらに人気を高めていくだろう。 取材・文・写真:生駒明

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