政治団体「NHK党」党首の立花孝志氏(57)が、1月に亡くなった竹内英明・元兵庫県議=当時(50)=の妻(50)に名誉毀損(めいよきそん)罪で刑事告訴された。死者の名誉毀損は刑法に規定されているが、専門家によると、立件のハードルは高く、事例もほとんどないという。 同罪は、「公然と事実を摘示し人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と規定。生きている人だけでなく、すでに亡くなっている人に対しての行為も処罰の対象となり得る。ただ、死者の名誉毀損は生きている人と異なり、罪に問われるのは虚偽の事実を示した場合に限られる。 刑法に詳しい甲南大の園田寿名誉教授によると、死者の名誉毀損罪を成立させるには、死者に関する「虚偽の事実を故意に示した」ことを立証する必要がある。 例えば、発言によって死者の名誉を傷つけたとして告訴された被告訴人が、「虚偽と知りながら言いました」と認めれば、罪に問われることになる。しかし、実際には「真実だと思って発言した」などと釈明するケースが多く、その場合は「被告訴人がどのように思っていたか、内心の事情となるので証明が難しい」と園田氏は言う。 今回の立花氏に対する刑事告訴のケースでは、竹内氏が逮捕される予定だったとの立花氏の発信自体は、当時の兵庫県警本部長が完全否定し、立花氏も誤りを認めている。示した事実が虚偽であることは明白といえ、立件のポイントは故意性の有無となる。 園田氏が重視するのは立花氏の発信の根拠だ。「確実な情報源に基づいていれば、発信はやむを得ないと判断される」とする一方、SNS上の情報や噂話だけでは「もしかしたら虚偽かもしれない、と思いながら発信した『未必の故意』が成立し得る」と指摘する。 竹内氏の妻側は告訴状で、立花氏が発信を削除、訂正した後も竹内氏の社会的評価を低下させる言動を続けていたことなどから、立花氏が虚偽の事実を示したことに「『未必的な故意』が認められることは明らかだ」と訴えている。