北朝鮮工作船に射撃、尖閣では中国漁船に衝突された〝生き証人〟 巡視船「みずき」に乗船

海上保安庁で「時代の生き証人」と言われる巡視船がある。那覇海上保安部(那覇市)に所属する巡視船「みずき」だ。北朝鮮工作船の銃撃・沈没事件や尖閣諸島中国漁船衝突事件を経験した猛者。平成12年の就役から四半世紀にわたり日本の海を守ってきた「みずき」が8日、報道関係者に公開され、産経新聞の記者が乗り込んだ。 ■船内には表彰パネル 「ものすごい大きな事案に立ち会った船。まさに時代の生き証人だ」 那覇海上保安部の税所百年部長はそう言って、甲板の20ミリ機関砲を見つめた。 船内には表彰パネルが誇らしげに掲げられており、命がけで北朝鮮工作船に対峙(たいじ)した海上保安官たちと「みずき」の功績を今に伝えている。 平成13年12月、鹿児島県・奄美大島沖の東シナ海で巡視船が不審船を発見。不審船は再三の停船命令に従わず逃走した。その後、巡視船が接舷を試みたところ、不審船は自動小銃とみられる武器で発砲。巡視船は船体射撃で応戦した。 福岡海上保安部に所属していた「みずき」も銃撃戦の渦中にあり、不審船の船首部分に向け、機関砲で射撃している。その後、不審船は自爆して沈没。翌14年に船体を引き揚げ、不審船は北朝鮮の工作船だったことが明らかになった。 「みずき」は平成20年、国境警備の最前線である石垣海上保安部に配置換えとなった。事件が起きたのはその2年後だった。 22年9月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で違法操業していた中国漁船が「みずき」と「よなくに」に体当たりしてきたのだ。海保は中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕したが、那覇地検はその後、処分保留のまま船長を釈放した。 ■今も海を守るベテラン 「みずき」は令和4年、那覇海上保安部に2度目の配置換えとなった。船齢も25とベテラン格。税所部長は「船齢はいっているが、今もしっかりと海を守っている」と胸を張る。 「出航用意。ニュートラルよし。おもかじいっぱい!」 操舵(そうだ)室に乗組員の声が響き、にわかに慌ただしくなる。船尾がそろりと岸壁を離れ、短音の汽笛が3回鳴った。後進する合図だという。

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