【パリ=三井美奈】米国人初のローマ教皇、レオ14世が16日、就任から100日を迎える。フランシスコ前教皇の和平外交を引き継ぎ、ウクライナやパレスチナの紛争解決を訴える一方、LGBTなど米政治に直結する問題では前教皇のリベラル路線とは距離を置いてきた。トランプ米政権との関係に配慮しているとの指摘が出ている。 ■LGBT、言及せず レオ14世は就任以来、前教皇の「対話で橋をかける」という言葉を何度も引用し、移民や社会的弱者に寄り添う姿勢を示してきた。一方で、トランプ政権が進める不法移民追放に対し、正面から批判はしていない。前教皇が「米国で起きている重大な危機」と位置づけ、反対を表明したのとは異なる。 また、レオ14世は5月、「男女の結合」が家庭の基盤だと明言し、前教皇との温度差を示した。前教皇は2023年、同性愛や「変則的」なカップルに対する教会の祝福を認める方針を示し、LGBTの信者に寛容な姿勢をとっていた。 レオ14世についての著作がある米国人ジャーナリスト、クリストファー・ホワイト氏は「レオ14世は、トランプ政権と直接対立しないようにしている」と指摘した。前教皇に対しては、米国のカトリック保守派から強い不満が出ていたが、レオ14世の出現で沈静化したとも述べた。 7月実施の米世論調査で、レオ14世を「好意的に見ている」と答えた人は57%。トランプ米大統領の41%を大きく上回り、世界の指導者で最高だった。 ■米外交の力を重視 レオ14世は5月の就任式翌日、式に参列した米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官と会談した。2人はともにカトリック教徒。米メディアは、前教皇時代に悪化した教皇庁とトランプ政権の「関係リセット」の機会になったと報じた。 日本大学の松本佐保教授(宗教と国際政治)は「レオ14世は、米外交を担うカトリック教徒の要人を重視している。式典の席次で2人を優遇したことでも明らか」とみる。トランプ政権に配慮する理由について、「ウクライナやパレスチナの紛争解決には、米国の仲介が不可欠とみているのだろう」と分析した。 レオ14世はウクライナのゼレンスキー大統領やプーチン露大統領、イスラエルのネタニヤフ首相らと相次いで電話会談し、和平への熱意を示してきた。トランプ氏が今月、旧ソ連のアゼルバイジャン、アルメニアによる和平文書調印を仲介した際には、いち早く歓迎を表明した。