トランスジェンダー男性であるというアイデンティティを反映した独創的な作品作りで国内外から注目を集める期待の若手、飯塚花笑監督の最新作、映画『ブルーボーイ事件』の本予告映像が公開された。 1960年代、東京オリンピックや大阪万博で沸く、高度経済成長期の日本。国際化に向け売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた通称ブルーボーイたちを一掃し街を“浄化”するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。 1960年代の日本では、性別を変えることは、明確には認められていなかった。この時代に、性別適合手術を行った医師の裁判で、手術を受けた女性たちの“幸せか不幸か”が議論された。そんな前代未聞ともいえる裁判で証言台に立ったのは、性別適合手術を受け、恋人の若村(前原滉)と幸せな日々をおくっていたサチ(中川未悠)。弁護士の狩野(錦戸亮)から証人として出廷してほしいという依頼を受けた当初、サチは葛藤しながらも断るが、かつての同僚・アー子(イズミ・セクシー)は自由に生きられる世の中を夢見ていた。そんなアー子にブルーボーイの元締めであるメイ(中村中)は現実に目を向けるように、と厳しい態度をとる。 “多様性”という言葉が叫ばれる前の頃、同じ境遇であっても考え方は様々でブルーボーイの中でも困惑が広がっていく中、サチはアー子に背中を押されるように証言をすることに。しかし、証言台に立つことで弁護士から激しく尋問され、記者に追いかけられ憶測の記事が飛び交う事態に発展。サチは若村との幸せな日常を投げ出してもこの裁判に向き合う事を決意するが‥‥。 いま以上に性的マイノリティの人々に対する激しい差別が横行していた高度成長期の日本を舞台に描かれる、自らの尊厳と誇りをかけて司法と世間と闘った知られざる女性たちの物語が、多様性へのバックラッシュの嵐が国内外で吹き荒れる現代に、差別や偏見についてもう一度問いかける。 映画『ブルーボーイ事件』は、2025年11月14日(金)より全国公開。