軍事力で世界を脅かす3カ国のトップが蜜月ぶりをアピールする光景は、まさに異様というほかない。 中国が北京で開いた抗日戦争80年の記念式典で、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が並び、結束を強く印象づけた。 行われた軍事パレードを3カ国首脳がそろって観覧するのは、66年ぶりという。 習氏は、米国に対峙(たいじ)する「世界的な指導者」として自らを演出したかったのだろう。 だが、ロシアは国際法違反のウクライナ侵略を3年以上続けており、プーチン氏には戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている。北朝鮮はロシアに若い兵士や砲弾を送り込み、殺りくに加担している。 非道な独裁者を丁重にもてなし、後ろ盾となっている中国の姿勢は、世界秩序のさらなる不安定化や混乱を助長する。 10年前の70年記念と比べると、ウクライナ侵攻で対立する欧米主要国の首脳は参加せず、外国の首脳級も26カ国程度と数は減った。国際社会で広がる分断を浮き彫りにしている。 軍事パレードでは、米本土に届く潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などを初公開し、戦闘機や無人機、極超音速兵器など多数の新型兵器もそろえ、軍事力を誇示した。 この背景には、失業率の高止まりや地方政府の債務リスクなどを抱え、自国の経済が行き詰まる中で求心力を高める狙いがうかがえる。 対外的には、高関税政策を乱発して米国第一に走るトランプ政権に対抗する姿勢や、ロ朝への影響力をみせて、秋にも開催が見込まれる米中首脳会談を有利に運びたい思惑もあろう。 先だって開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議では、参加国に無償援助を表明した。 SCOは加盟国が拡大しており、国際協調に背を向ける米国への不信を募らす新興・途上国「グローバルサウス」に対して、主導権を握ろうとしている。 一方、グローバルサウスの筆頭格であるインドのモディ首相はSCOには出席したが、軍事パレードの観覧には参加しなかった。 経済力や援助で「仲間」を広げようとしても、力による一方的な現状変更の危険なたくらみには、多くの国の理解を得られないと中国は自覚すべきだ。