小型機墜落事故によってアマゾンの密林に残された子供たちが生還するまでを追ったドキュメンタリー映画「空から墜ちた子供たち:40日間の密林サバイバル」が、9月13日よりディズニープラスで独占配信される。 同作は、奇跡の生還を果たした4人の子供たちと、彼らを救助した隊員が40日間の全貌を語るもの。2023年5月1日、南米コロンビアのアマゾン密林に小型機が墜落し、母親を含む3名が死亡した。残されたのはわずか生後11カ月の幼児、5歳の弟、9歳の妹、そして13歳の長女の4人。毒を持つ植物が潜む危険なジャングルで、長女レスリーは祖父母から教わった先住民の知識を駆使しながら、積み荷の食料やジャングルの果物などで空腹をしのいだという。一方、コロンビア軍と先住民の捜索隊は約200人体制で捜索を開始。墜落から40日後に子供たちが発見されると、世界中から「奇跡だ」と喜びの声が寄せられた。 作中では当事者たちの言葉によって、壮絶なサバイバルや、国家と先住民という組織の壁を越えて結束し展開された救出劇の模様が明らかになる。監督を務めたのは「メッシとワールドカップ:世界王者への道」で知られるフアン・カミロ・クルス。彼と、プロデューサーのチャイ・ヴァサルヘリィによるコメントを後掲した。 ■ フアン・カミロ・クルス コメント □ なぜドキュメンタリー映画という形でこの物語を世界に発信しようと思ったのか 最初はそれほど大きなニュースではありませんでした。アマゾンに飛行機が墜落して、まさか生存者がいるとは誰も思っていなかったからです。ですがジャングルで4人の子供が行方不明になっているとわかると、一気に大きなニュースになりました。先住民や救助隊も動員される大規模な救出作戦が始まり、子供たちの生還が明かされたとき、誰もその奇跡を信じられませんでした。それはまるで、コロンビアに伝わるマジックリアリズム(魔術的リアリズム)のようでした。それで、ドキュメンタリー映画監督として、好奇心旺盛な人間として、「よし、これは映画になる」と思ったんです。子供たちが戻ってきてすぐに、自分たちのエージェンシーを通してチャイに連絡を取り、映画の制作が動き始めました。 □ 実際に子供たちに会って話を聞いたとき、どんな印象を受けたか 彼らは本当に素晴らしいです。ただ実際に会って感じたのは、彼らはただの子供なんです。当たり前のことですがそれを感じて更に感動しました。彼らは、スーパーパワーを持ったスーパーヒーローではない。彼らはたまたま、その環境(ジャングル)で育って、自分たちが置かれた状況を理解し、耐え抜くことができる知識と経験を積んだただの子供たちでした。そして、彼らはそこでの資源(利用出来るもの)を理解し、その空間の本質を理解し、多くのことを理解することができたんです。でも同時に、彼らが生き残ったのは運であり奇跡でした。たくさんのことが重なった結果なんです。ですが、彼らはジャングルについて驚くほど知識が豊富で、そこにいることの意味を体感してきた子供たちなんです。私がいつも言っていたのは…私もアマゾンにライトなしで行ったことがありますが、真っ暗闇のアマゾンの真ん中にいるのがどれだけ怖いかということです。彼らがそれをどう感じるかは、私には想像もつきません。そういう環境で育つと、そういった経験とともに成長するんだと思います。そして、彼らがそれを成し遂げられたのは、まさにそれが理由だと思います。彼らは本当に素晴らしくて、驚くべき子供たちなんです。 □ 日本の視聴者へのメッセージ これは、皆さんの子供たち、ご家族に向けた希望の物語です。忍耐や愛の物語でもあります。そして、これはアマゾンとジャングル、そしてそこに秘められた力の物語だと思います。アマゾンは誰もが知っていて、私たちみんなが何らかの形でつながっている場所です。そして、私たちが理解し、称賛し、学ぶべき場所なんです。アマゾンには、私たちが思っている以上に大きな力があると、私は信じています。人々にジャングルが持つ神秘的な力についてもっと知ってもらいたいです。 ■ チャイ・ヴァサルヘリィ コメント □ 子供たちと父親の関係性(救出後、父親は長女のレスリーを以前から虐待していたとして逮捕された)や、先住民と軍隊がどのように協力して子供たちを救出したかに焦点が当てられているが、それはなぜか 家庭内暴力の被害者らはしばしば、自分の言葉で自分の物語を語る機会がありません。そしてこれは同じく多くの先住民コミュニティに当てはまることなんです。ですから、私たちはレスリーや弟や妹たちの経験を明らかにしたかった。そして、その根底にあるのは、彼女と義父(下2人の父親でレスリーとは血縁関係がない)との関係です。何が起こったのかを解明するために、関係者全員とじっくり話をする必要がありました。更に、ほとんどがカトリック教徒であるコロンビアの特殊部隊の隊員たちが、先住民の信仰を尊重するようになるまでの軌跡は、驚くべきものでした。それは希望に満ちた物語であり、私にとって非常に感動的ものでした。これは、レスリーが自分の物語を語る力を得たことについてと、そして同時に2つのことが真実でありえるということを示しています。つまり、相反する信仰を持つ軍と先住民の救助隊員たちが共通の人間性を見出すことができたということなんです。だからこそ、彼らは子供たちを見つけることができたのだと思います。 □ なぜドキュメンタリー映画という形でこの物語を世界に発信しようと思ったのか 真実はフィクションよりもずっと興味深いものだと思います。そしてしばしば、真実はフィクションよりも奇妙なものです。本作は、生き残るための、観る人に力を与えてくれる、驚くべき物語です。ジャングルで40日間生き延びたという事実が、まさにその証拠です。彼女はわずか13歳で、生後11ヶ月の赤ちゃんを連れていました。そして、彼女の人生で最悪の瞬間を、強さに変えることができたんです。彼女は自分の母親が亡くなるのを目撃し、義父からも逃げていて、とにかく酷い状況にいました。義父のせいで、いろんな意味で見つかりたくなかったんです。レスリーには真の人間性と強さがあります。そのことに私はとても感動しました。叔母のカミーラも、この物語がコロンビアにとっていかに教訓的な出来事であるかを語っていました。1人ひとりの力を合わせれば、どんな困難にも負けずに成し遂げることができるのです。 □ 子供たちが生き延びた理由について 2つあると思います。1つは、彼らがジャングルで育ったことだと思います。まるでジャングルにいる方が居心地が良いみたいなんです。彼らは超高層ビルを見たことがありませんでした。2つ目は、レスリーは人生の大半を、弟や妹たちの世話に費やしてきたということです。彼女に実際に会ったとき、「ああ、この人は特別な人だ。だから生き延びられたんだ」と思った瞬間がありました。それは学問的な知識とか、そういうものではないんです。彼女には内面的なカリスマ性と強さ、そして謙虚さがあるんです。弟や妹への彼女の献身さは、それほど強いものだったんです。彼女は実質母親を担っていたということもあり、ほとんど勇敢と言える彼女の決意にとても感動しました。「義理の父のところに戻ることになるが、なんとしても弟や妹たちを生きて帰す」という。彼女は家族を心から愛していました。だから、彼女は特別な人だと思います。そしてそれは、私たちが本当に知ることのできない、ある種の人間的な資質だと思います。彼らが幸運だったのは、まさにその点だと思います。結果彼女が機転を利かせ、生き延びることができました。 □ 日本の視聴者へのメッセージ 私はちょうど、11歳と9歳の2人の子供たちと15日間日本にいました。日本人が何百もの精霊や妖精(八百万の神のこと)がいると信じていることについて、たくさん話しました。そして、この非常に有機的な日本の信仰体系には何か、コロンビアとアマゾンを描いたこの物語に通ずるものがあると思います。もっと普遍的な視点で言えば、私たちは今、非常に複雑な時代を生きています。気候変動、デジタル社会による若者の孤立…。この作品は、人と人とのつながりについての、とてもシンプルなサバイバルの物語です。そして、私たち1人ひとりの孤独をほんの少し和らげてくれる、勇気の物語です。ぜひこの素晴らしいミステリーとアドベンチャーを皆さんにご覧いただきたいです。 ©2025 National Geographic Partners, LLC