2019年、2つの事件が、日本社会に衝撃を与えました。京都府向日(むこう)市で発生した女性遺体遺棄事件と、滋賀県米原(まいばら)市で発生した殺人未遂事件です。いずれも容疑者は生活保護ケースワーカー(CW)でした。 ケースワーカー(CW)とは、主に自治体の福祉事務所に勤務する社会福祉の専門職(地方公務員)で、生活に困窮し生活保護を必要とする人の相談を受け、生活状況の調査・自立支援・各種福祉サービスとの連携などを担う職員です。 これらの事件は、表面上は個人の犯行に見えるかもしれませんが、そうとは言えない面があります。背景には、CWの過酷な労働環境に加え、CWと生活保護受給者との独特の関係性が抱えるリスクがあると考えられます。 本記事では、これら2つの事件を取り上げ、CWが直面する困難、現場での生活保護受給者との関係において構造的に生まれやすい「いびつな関係」の危険性、今後同種の悲劇を繰り返さないために何を学ぶべきか、考えます。(行政書士・三木ひとみ)