「お前らナメられてるんだから」暴走を命令した暴力団員と『川口ドラゴン』の少年らの〝関係性〟

夜の住宅街で、2車線の道路を道いっぱいに広がって走る数台のバイク。運転する人物らは信号を無視し、中指を立てたり蛇行運転をしたりして、後ろを走る警察車両を挑発していた──。 警視庁は9月30日までに’24年12月に東京・足立区内で暴走行為をしたとして、道交法違反で当時15歳から17歳の少年10人を書類送検、これを指示した指定暴力団住吉会系傘下組織の幹部・海老塚龍巳容疑者(34)を同容疑で逮捕した。 9月30日の送検で報道陣の前に姿を現した海老塚容疑者は、眉間に深くシワを刻み、鋭い眼で周囲を見回しながらも、粛々と検察庁へ向かうバスへと乗り込んでいた。 昨年12月9日の午後9時ごろ、足立区の舎人公園に不良少年たち24人を集めた海老塚容疑者は、「ここらへんを3部隊で〝地回り〟してこい。お前らナメられてるんだから、気合い入れろ」と、スマホに表示した地図を手に暴走行為をするように命じたという。 「『川口ドラゴン』を名乗る少年たちは、埼玉県川口市を拠点に、集団での暴走行為をするだけでなく、強盗や恐喝などを繰り返しており、埼玉県警はトクリュウグループとしてその動向を注視していました。グループはいくつかあるようですが、その1つを束ねる『総長』と暴力団員の海老塚容疑者が知り合いだったことから、いわゆる『ケツ持ち』として、関わることになったようです。 足立区周辺では、敵対するグループも暴走行為をすることがあったために、少年たちに〝地回り〟をして威嚇するよう、『バイクで走っている「敵」を見つけたら、因縁を付けてこい』とも命じていました。警察では敵対するグループの背景も含めて調べを進めているといいます」(社会部記者) 少年たちは警察の調べに対して、「これまでに5回くらい指示されてやった」「信号無視をして警察に追われるのが楽しかった」などと供述し、容疑を認めているが、一方の海老塚容疑者は黙秘しているという。 ◆不良少年がトクリュウ化 昭和の昔から、暴力団員が上納金を取ったうえで暴走族の「ケツ持ち」として面倒を見るという例は珍しくなかった。暴走族から暴力団に〝就職〟するのは、お決まりのコースであり、〝OBと現役〟の関係は切っても切れないものだったのだ。しかし、最近では少し事情が違うようだ。事件に詳しいライターが解説する。 「’24年9月に神奈川県相模原市で26人の暴走族が検挙された事件でも、バックには暴力団員がおり、検挙された2つのグループのうち1つはこの暴力団員が『オレが面倒見るからチーム(暴走族)作れ』と言ってつくらせたチームでした。最近では1980年前後の最盛期のような大集団ではなく、地元の不良グループ何人かで暴走する例がほとんどです。 暴力団員は不良少年たちの『ケツ持ち』をして上納金を納めさせるほか、手足のようにトクリュウ型犯罪に使うという例が増えています。特殊詐欺などトクリュウの犯罪絡みで暴力団組員が逮捕されるケースも少なくありません。不良少年たちはもはや『トクリュウ』として犯罪組織化しているのです」 警視庁は10月1日から『匿名・流動型犯罪グループ対策本部』を、また刑事部に「特別捜査課」を新設、トクリュウ型犯罪の捜査体制を強化した。今回の事件も流動化、複雑化する反社会的勢力の一端をのぞかせたものなのかもしれない。

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