【AFP=時事】ドイツ南部バイエルン州アシャッフェンブルクで1月22日に公園にいた幼稚園児らを次々と刃物で襲い、男児(2)と助けに入った通行人の男性(41)を殺害し、3人を負傷させたアフガニスタン出身のエナムラ・O被告(28)の初公判が16日、行われる。 この事件はドイツを震撼(しんかん)させ、総選挙を前に移民問題をめぐる白熱した議論を巻き起こした。 現場で逮捕されたエナムラ被告には長年の精神障害の病歴があり、検察によると、精神鑑定の結果、刑事責任能力なしと結論付けられたという。 検察は、エナムラ被告に過激主義やテロリズムの動機から行動した兆候は見られず、精神科施設への恒久的な収容を求めていると述べた。 エナムラ被告はアシャッフェンブルクの公園で、幼稚園児5人が2人の教師に付き添われて木製のカートに乗っていたところを襲撃。包丁で次々と切りつけた。男児と通行人の男性を殺害した他、シリア人の女児(2)と教師1人、助けに入った72歳の男性の3人を負傷させた。間もなく現場で逮捕された。 エナムラ被告2024年8月、近くの町アルツェナウにある難民認定申請者用宿泊施設で、他の難民認定申請者を肉切り包丁で脅し、軽傷を負わせたとされる。当局は2023年にエナムラ被告を到着した最初の欧州連合(EU)加盟国に強制送還しようと試みたが、失敗していたことがアシャッフェンブルクの事件後に明らかになった。 ドイツで血なまぐさい襲撃事件が相次ぐ中で起きたアシャッフェンブルクの事件は、激しい政治的反発を引き起こした。 中道右派政党「キリスト教民主同盟(CDU)」を率いるフリードリヒ・メルツ首相は野党党首だった当時、総選挙で勝利し首相に就任すれば「初日から」難民受け入れ規定の「抜本的な」見直しと厳格な国境管理を実施すると約束した。 メルツ氏は事件の約1週間後、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を得て、より厳格な移民・難民政策を求める拘束力のない決議を議会で可決した。 メルツ氏の極右の支持に頼る決断は、第2次世界大戦後のドイツ政治における長年のタブーを破るもので、激しく批判され、大規模な抗議デモを引き起こした。【翻訳編集】 AFPBB News