痛い思いをして反省してほしいと思った-。大阪市浪速区の自宅マンションで交際男性=当時(31)=を殺害したとして殺人罪などに問われた女(31)は、大阪地裁で開かれた裁判員裁判で動機をこう語った。一方で男性を殺そうとしたことはなく、「大切な婚約者。昔も今も愛しています」と強調した。言い渡された判決は懲役18年。公判を通じて浮かび上がったのは、2人のいびつな関係性だった。 ■死亡男性の全身にやけど 「同居している男性の意識がない」。谷口桃花被告からこんな119番があったのは令和5年4月のこと。駆け付けた消防隊員が浴槽内で倒れている男性を発見し病院に搬送したが、まもなく死亡が確認された。 司法解剖で、死因は溺れたことによる窒息死と判明したが、男性の体には一見して不審な点があった。胸や腕など全身にやけどがあり、首にはひもで絞められたような皮下出血もみられたのだ。 やけどについては搬送時「(風呂の)追い炊きが誤作動した」などと述べていたものの、大阪府警が約1カ月後に被告を逮捕。4年9月と11月に男性に熱湯を浴びせたとする傷害罪と、5年4月に熱湯をかけ、さらに首を絞めた上で溺れさせ、殺害したとする殺人罪で起訴された。 ■被告は「パパ活」で自らに苦痛 今年9月に始まった裁判によると、被告が男性と出会ったのは高校1年のとき。男性は同じ高校の2つ上の先輩で、被告が21歳のときに交際が始まった。婚約し、6年初めには入籍することにもなっていた。自宅で2人で過ごす時間が長く、自ら「共依存」と表現するほどの仲の良さだったという。 ただ、被告によると、同居生活にはある〝ルール〟があった。けんかなどをして自分に非があると認める際は、自らに苦痛を与え、「反省を行動で示す」必要があるという。被告の場合は性風俗店に勤務し「体が商品」だったため、反省を示す際には「パパ活」などを行い、精神的な苦痛を課していたというが、男性の場合は肉体的な苦痛だった。それがエスカレートしたのが「熱湯をかける」という行為だった。 4年9月には鍋で沸騰させた湯を背中全体にかけて皮がむけるほどのやけどを負わせ、2カ月後には少し温度を下げた湯を茶碗(ちゃわん)で腕にかけた。しかし、2人の関係は揺らぐどころか、「同棲(どうせい)をやめるのは男性が最も嫌がること」(被告)だったという。ただ検察側は関係は対等ではなく、「被告のゆがんだ愛情に基づいた支配関係があった」と指摘した。