名古屋市西区のアパートで1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕されたアルバイト安福(やすふく)久美子容疑者(69)=同市港区=が、今年に入り、愛知県警からDNA型に関して、複数回、任意提出を求められていたが、拒んでいたことが県警への取材でわかった。10月に入って提出に応じ、鑑定を行ったところ、事件現場に残された血痕から検出されたDNA型と一致したという。 県警によると、安福容疑者の逮捕容疑は99年11月13日ごろ、名古屋市西区稲生町5丁目のアパートの一室で、高羽さんの首などを刃物で複数回刺すなどして失血死させたというもの。「あっています」と容疑を認めているという。 県警は今年に入り、安福容疑者を複数回、任意で事情聴取していた。DNA型の任意提出も求めていたが、拒否されていた。だが、10月に入って一転し、提出に応じ、鑑定を進めていたという。その後、10月30日に安福容疑者が1人で県警西署に出頭。出頭の際に、事件への関与をほのめかす趣旨の話をしていた。県警は31日、現場のアパートに残っていた血痕から採取したDNA型と、容疑者のDNA型が一致したことを踏まえて、逮捕に踏み切ったという。 関係者によると、安福容疑者は、高羽さんの夫の悟さん(69)の高校の同級生という。 この事件では、99年11月13日午後2時半ごろ、このアパートで、住人の高羽さんが遺体で見つかった。遺体の近くには当時2歳の長男がいたが無事だった。 県警はのべ約10万1千人の捜査員を投入し、5千人以上の関係者から聞き取りをするなどして容疑者の特定を進めてきた。これまでの捜査では、玄関に残されていた血痕のDNA型鑑定などから、犯人は血液型がB型で、当時40~50代の女とみられていた。靴のサイズは24センチと判明していた。 2010年の刑事訴訟法改正で殺人事件の時効が撤廃されて、捜査が続いていた。警察庁は20年にこの事件を「捜査特別報奨金」の対象に指定。事件解決につながる有力情報の提供者に最大300万円を支払うことを呼びかけ、情報を集めてきた。(石垣明真)