「私が娘の部屋に入ると、娘はベッドの上でうずくまって泣いていました。私はベッドの上に腰掛けて、『何があったか話して』と言いながら、話したくなるまでしばらく待ちました」 女子中学生・Aさん(事件当時13歳)の母親は、娘から被害を打ち明けられたときのことをこう話し、怒りをあらわにした。Aさんは自称カメラマンの山田裕三(ひろみ)被告(事件当時55歳)に「写真を撮らせて」と声をかけられて性被害に遭った。 不同意わいせつの罪に問われている山田被告の判決が、11月6日に言い渡される。これまでの公判での山田被告の主張や、Aさんの保護者の怒りの言葉などを紹介する後編だ。 山田被告はAさんにわいせつな行為をしたとして、’24年11月5日に不同意性交等などの疑いで警視庁池袋署に逮捕され、その後、不同意わいせつの罪で起訴されている。 ’23年7月にもさいたま市内の公園で、やはり「写真を撮らせて」と女子中学生に声をかけ、ポーズを指定すると見せかけて体を触って逮捕。迷惑防止条例違反で懲役1年2ヵ月、保護観察付き執行猶予4年の判決を受けており、執行猶予中の身だった。 検察官からの「保護観察所では性犯罪の再犯防止プログラムを何回くらい受けたのか?」という質問に、山田被告は次のように答えている。 「月に2回は受けていました。ただ、アホだったから、あまり頭に入ってこなかったですね。相手の気持ちになって考えるというのが、すごく難しいと思いました。すごくわがままに生きてきたので。 (刑務所に)放り込んでくれたらなあと考えていました。刑務所に入れてくれれば、もっと早く知識がついていたかもしれません。日本って性犯罪(者への更生プログラムなどの対応)に遅れてるって言われてるじゃないですか。もっと早くいろんなことを知って、病院とかに通院できていればと思いました」 ◆おどけた様子すら見せていた山田被告 保護観察中は、再犯しないようになるべく家から出ない生活をしていたというが、住んでいたアパートの上の部屋の騒音に悩まされ、図書館などに行くようになったと山田被告は主張していた。「そこからおかしくなって、女の子に目がいくようになった」といい、「好みの子が多い」という池袋の『乙女ロード』に足を向けていた。 被告人質問(8月19日・第6回公判)では、山田被告は笑顔で答えることも多かった。「18歳以上に見えて、脚がきれいでおしゃれな子に声をかけていた」と話す被告に、弁護人が「なぜ脚がきれいな人という基準があったのですか?」と質問すると、まるで重大な秘密を打ち明けるかのような口調で突然小声になり、「脚フェチだから」と答えるなど、おどけた様子すら見せていた。 下半身を触られたと訴えるAさんに対し、山田被告は「足は触ったが下半身は触っていない」と主張しているが、捜査段階では「絶対に(Aさんの下半身を)触ってないとは断言できない」と供述していた。「何が変わったのか?」という検察の質問に、このように答えている。 「池袋のアニメショップで声をかけて、公園を回りながら写真を撮った子は何十人もいました。下半身を触った子も10人以上います。ただAさんの調書を見て、この子は触ってないなと思ったので。別にAさんが嘘を言ってるとは思っていません。誰にでも勘違いはあるので」 ◆「ものすごい怒りを感じています」 しかし、冒頭の証人尋問(6月26日・第5回公判)でのAさんの母親の証言にあるように、彼女はひどいショックを受けて、すぐには自分が遭った被害のことを話せなかったのだ。被害のことを話すと、「過呼吸になった」とAさんの母親は証言している。 「娘は眠りが浅くて、怖い夢を見ると言っていました。泣きながら目が覚めることもありました。事件直後は自宅に1人でいるのが怖いというので、私も娘に付き添っていました。犯人に対しては、いま現在も、ものすごい怒りを感じています」(Aさんの母親) 論告弁論(9月30日・第7回公判)で検察官は「未成年者の判断能力の未熟さにつけ込んで、自己の性欲を満たそうとする犯行は卑劣である」などと指摘。「常習性がうかがわれ、執行猶予が取り消されることを考慮してもなお、相当期間の矯正施設への収容が必要」と述べ、「懲役2年6ヵ月」を求刑。 一方、弁護人は「Aさんの年齢についても高校生ぐらいとの認識にとどまり、詳細な年齢確認は行っていなかったものの、中学生以下という認識はなかった」などとして、「無罪の判決が相当であると思慮します」と述べた。 検察官の取り調べのなかで、山田被告は今回の事件のことをこのように述べたという。 「リハビリ中の身にはあまりにも甘美な誘惑だったとはいえ、またこのようなことをしてしまった自分に死ねと言いたいぐらいです」 被告人質問で社会復帰後は、「専門の病院に入院して治療に取り組みたい」と供述していた山田被告。また、弁護人から「将来やりたいことは?」と問われて「NPO法人で、未来の被害者や加害者を減らす運動をやってみたいと考えています」という驚きの抱負も述べていた。 将来はともかく、まずは再び同じ罪を犯すことのないように更生すべきだろう。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良