株券偽造し「会社乗っ取り」か 東京佐川急便事件関与の男性ら逮捕

不動産関連会社「ハナマサ」(東京都)の株券や株式譲渡契約書を偽造したとして、警視庁暴力団対策課は13日、東京都渋谷区大山町の職業不詳、松沢泰生容疑者(74)ら男女3人を有価証券偽造・同行使と有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕したと発表した。松沢容疑者は架空の株主として経営権を握り、ハナマサの土地売却益を得るために同社の「乗っ取り」を画策したとみられる。 ハナマサを巡っては、2022年に同社が所有する土地が10億円で売却され、代金のうち8億円が松沢容疑者側に渡っていた。警視庁は、他人の土地を勝手に売却する「地面師」の会社版とも言える手口だったとみて調べている。 他に逮捕されたのは、いずれも職業不詳の沢田洋一(76)=東京都新宿区歌舞伎町2=と、斎藤ゆかり(60)=目黒区上目黒1=の両容疑者。 逮捕容疑は、共謀して、ハナマサの株券や、前社長からこの株を譲り受けたとする株式譲渡契約書を偽造。ハナマサの株主権を巡る民事訴訟で、松沢容疑者が株主であることの証拠資料として、23年3月と24年1月に東京地裁へ提出したとしている。警視庁は3人の認否を明らかにしていない。 警視庁や捜査関係者によると、ハナマサは10年に株式の発行を停止した。しかし、松沢容疑者が証拠提出した株券は発行時期が12年になっていた。また、この株券を22年6月に譲り受けたことになっていたという。 ハナマサは22年12月、埼玉県東松山市に所有する約4万平方メートルの土地を物流会社に10億円で売却。その日のうちに、8億円がハナマサから松沢容疑者が関係する2社に送金された。売却前、松沢容疑者は自身の関連会社を貸主とする架空の金銭消費貸借契約をハナマサと結び、この土地を担保に設定。これが送金の根拠にされていた。 登記上、松沢容疑者は23年1月にハナマサの社長に就任。実際には開かれていない株主総会の決定を不審に思ったハナマサの元代表が「会社が乗っ取られそうだ」と警視庁に相談していた。 元代表と松沢容疑者の間では23年以降、どちらが本当の株主かを確認する民事訴訟が続いている。今回の逮捕容疑となった裁判所への資料提出も、この訴訟で起きた。1、2審はいずれも元代表を株主と認め、松沢容疑者の提出した証拠類を勝手に作られたものと認定した。松沢容疑者は上告している。 ◇東京佐川急便事件にも関与 松沢容疑者は、東京佐川急便事件(1992年)で、渡辺広康社長(当時)の「金庫番」と呼ばれ、245億円の特別背任罪で懲役5年の実刑判決を受けた。その後も飲食店運営会社の株式の公開買い付け(TOB)を巡る証券取引法違反事件やベンチャー企業の架空増資事件で逮捕・起訴されており、財界を舞台にした事件に度々関与している。 ハナマサは、元々スーパーマーケット「肉のハナマサ」を運営していたが、業績悪化により08年ごろにスーパー部門を別会社の「花正」に譲渡。既に「肉のハナマサ」との資本関係はなくなっている。【長屋美乃里】

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