東京都足立区の西新井大師近くの駐車場で、ベビーカステラを販売していた男性のキッチンカーに消火器を噴射したとして威力業務妨害の罪に問われた、阿部穣司被告(42=逮捕時)の初公判が11月25日、東京地裁で開かれた。 阿部被告は他に暴力行為等処罰法違反(集団的脅迫)の容疑で逮捕。逮捕時は「注意しただけ」など容疑を否認していた。 起訴状によると’25年1月2日に西新井大師近くの駐車場で、キッチンカーでベビーカステラを販売していた男性を、 〈誰の許可で店を出してるの〉〈俺たちは西新井でベビーカステラは1店舗しか認めてない〉〈明日もここで商売したら店をぶち壊す〉(以下〈〉内は起訴状による阿部被告の発言) などと脅迫。しかし男性が翌3日も同じ場所で営業していたところ、阿部被告がキッチンカーに消火器を噴射し、営業を不能にしたという。細身ながら筋肉質の阿部被告はサックスブルーの上下のスウェット姿で入廷。金メッシュの短髪で鋭い眼光は威圧感を与える。起訴内容について阿部被告は、 「私がやったことに間違いありません」 と認めた。 検察の冒頭陳述によると、阿部被告は中学卒業後に建築関係の仕事に従事していたが、28歳から暴力団員として組に所属しており、前科は4犯だった。 被害男性の供述調書から状況が分かった。1月2日に阿部被告ら複数人から、 〈誰の許可で店を出している? 舐めているのか?〉 と脅迫を受けたが、営業許可を得ていたため1月3日も同じ場所で店を開いていた。そこに阿部被告がやってきて、 〈オヤジ(組長)が見たら嫌な気持ちになるだろうと思った〉 と持っていた消火器を男性の顔に噴射し、キッチンカーの中に投げ入れた。男性は目などに痛みを訴え呼吸困難になった。消火剤が散乱した車内は清掃のため4~6日、営業ができなくなった。さらにキッチンカーの清掃とメンテナスに46万円を要することになったという。 ◆「何が真面目なのか分からない」 被告人質問で阿部被告の口から語られたのは“縄張り”を侵されたヤクザのメンツだった。弁護人から犯行動機を問われると、 「注意したのに営業していたので自分の気持ちが収まらなかった」 と説明したうえで、 「本当に申し訳なかったと思います。反省しています」 と謝罪。被害弁償についても、 「おカネで解決じゃないですけど、そこはしっかりやりたいです」 と話した。 神妙な顔で反省の言葉を続ける阿部被告は、 「いろいろ考えることもあり、脱会の手続きをしています」 を暴力団を辞めることを示唆。そして、 「何が真面目なのか分からない。人に迷惑をかけないように生きていきます」 と更生を誓った。検察が「(暴力団を)辞めることは簡単なのですか」と質問すると、 「自分は組長になったこともないので分からない。でも話をつけないといけない」 と決意を語り、 「いいか悪いか分からないけどやり切った。ヤクザをしたことを感無量と言ったらおかしいけど」 とも語った。 裁判長からは消火器を噴射した理由を問われると阿部被告は、 「ヤクザはこうだろうという固定観念があった」 とヤクザの流儀に固執したことを反省した。前科4犯の阿部被告だが、今回の反省は本心なのだろうか。